TZ 7304:John Zorn "First Recordings 1973" (1995)

 極初期のジョン・ゾーン習作集。まさにアーカイヴ。音楽的よりも分析の意味で興味深い内容ではあるが。1973年から74年、ゾーンが20~21歳の履歴だ。

 全5曲を収録。
 まず"Mikhail Zoetrope" (1974)。三楽章形式の抽象音楽だ。極端に左右がミックスで、中央がポカンと空いている。クラリネットやサックスの軋むフリーキーなプレイを、雑貨を叩く音やサンプリング、自らの叫びなどをダビングした。

 メロディやテーマは聴き取れない。アイディア一発ながら、74年の段階で作品化を意識した点をまず評価する。ミュージック・コンクレートを意識したアプローチで、おそらくノイズ・ミュージックは考えていまい。既にフリー・ジャズも存在したが、ここではビートやスイング感は皆無で、あくまで無秩序な音を多重録音した。
 つまりアカデミックなアプローチを取りつつ、パンキッシュな破壊衝動も封じ込めた。20歳の若さゆえだが。

 しかしゾーンは既にサックスのテクニックを十分に兼ね備えた。それを要素の一つに留め、ムチャクチャな音像ばら撒きに徹するストイックな自己分析性が本曲の凄さだ。
 ただしのちのファイルカード・システムまで論理化されず、偶発性が優先のようす。

 "Conquest of Mexico" (1973)はヴァレーズとアルトーに影響受け作った作品とある。昔からブレないところがさすが。三楽章構成で、リバーブまみれの抽象音楽だ。前曲は時間の連続と断続を意識した無秩序だった。この時点では跳躍の度合は少なめに聴こえる。たしかに唐突な場面転換はあるが、違う世界観でなくカットバックのようだ。

 映画音楽のために素材を2台のテープレコーダで録音して作ったとある。素材を次々に一つのテープレコーダから別のレコーダへ流し込んだということか。録音後のテープ編集は無いらしい。
 ここでもゾーンはテクニックでなく音色や響きに着目した。幻想的で抽象風景が続く。ドラッグ・ミュージックっぽい酩酊性もある。音楽としては本盤の中で、もっともノイジーで楽しめる。

 "Wind Ko/La" (1973)はエレキギターのソロか。フレーズでは無くリズムに着目した。おそらく譜面は無く、即興でギターをひっぱたき、歪んだノイズが出てくるさまを録音。
 39秒や1分55秒あたりの跳躍は、いったんテープを止めて改めて録音か?思うがままに繰り出すビートは変拍子というか、そもそも小節を意識してはいまい。非連続性のかっこよさを、感情の趣くまま作った習作。しかしこれを追求し続けた才能が、のちのゾーンをつくっている。

 "Automata of Al-Jazari" (1974)は1分強の少品。テープ・コラージュか。18年後にNaked Cityで演奏する"SpeedFreaks"の原型だとゾーンは自己分析する。ぼくはさらに、一連のゲーム・ピースに通じる唐突な場面転換の、習作とも感じた。本盤の73年作品では、跳躍は偶発に頼った。
 だが74年の作品群では、いきなり違う世界に飛び移るスリルを意識した作品を作ってるように聴こえる。

 "Variations on a Theme by Albert Ayler" (1973)は、フリージャズ寄り。これまでクラシックの前衛音楽に準拠した作風が、ジャズに立ち位置を変えた。もっともふよふよと揺らぐフレーズ感にジャズを感じるのみ。前半は電子音楽による残響の揺らぎでフリージャズの勢いを表現。
 一瞬サックスのソロに変わるが、すぐに消えてしまう。新たに立ち上がったのは、エフェクタやテープ回転でぐしゃぐしゃに変調したサックス・ソロの再構築。計算ではなく即興的なノイズが続き、若干間延びは否めない。
 7分28秒くらいからの野太い電子音も面白いのだが、ランダムさが分かり過ぎ物足りぬ。

 ゾーンはここでもサックスのテクニカルな側面を全面に出さない。世界でも有数の手腕を吹きこなせてると、意識してたと思うが。
 せっかくなら当時のサックス・ソロが、録音残ってたらいいのに。

 ゾーンが音盤デビューは"LOWE & BEHOLD"The Frank Lowe Orchestra(1977)らしい。


 本盤収録の音源からの3年間、ゾーンの音楽成長の過程も興味深いが・・・たぶん音源は残ってないんだろうな。ゾーンもまったく自分の過去を語る気は無いようだし。

 なお本盤収録の楽曲群は、ライナーから以下の作曲順と推測する。
"Wind Ko/La"
"Conquest of Mexico"
"Variations on a Theme by Albert Ayler"
"Mikhail Zoetrope"
"Automata of Al-Jazari"

Personnel:
John Zorn

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