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Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Benzaiten」(2015)

 つかみどころなく、耳へ濃厚サイケがまとわりつく。

 アシッド・マザーズ・テンプルの宗家が2014年末から2015年頭にかけて製作した本盤は、元ランチャーズの喜多嶋修が76年に発表したアルバム"Benzaiten"を主題に製作された。同時に武満徹にも捧げられている。

 日本風味と抒情性をロックへ濃厚に溶かした本作は、全4曲中3曲を前述の"Benzaiten"からカバー。その上でAMT流のユーモアやサイケな即興性を混ぜ込んだ。
 混沌かつとぼけた風味を強く打ち出し、疾走する爆裂さは控えている。
 マスタリングはAMTの諸作と同様に、吉田達也が担当した。

 河端一が様々な楽器をダビングしつつ、ベースを中心に津山篤が遊び心を加える。
 スタジオで追い込んだ作品ながら、ライブ感をも内包させるのがAMTの懐深いところ。軋むようにうねるように、エレキギターのソロが伸びていく。シンセサイザーと絡みながら。

 仏教的な酩酊さ、雅楽に通じる滴る切ない情緒。これらがどんどん深い霧に向かっていく。津山の粘る歌声がギャグっぽさを付与し、したたかなグルーヴを作った。
 ドラムは比較的シンプルなテンポ感。このミニマルな浮遊性が、どっぷりと日本風味を醸した。
 AMTの"Nam Myo Ho Ren Ge Kyo"(2007)と同様の、血肉化した抹香臭さあり。これは関西ならではの文化の重みだと思う。他の地域では、このグルーヴは出せまい。
 
 爽快さや剛腕さは控えめ。けれどねっとりしたウネリは、AMTならではのブレない抜身の鋭さを持つ。これほどセンチメンタルな風情を両立させながら。
 (2)は尺八の響きと電子音を混ぜ合わせ、即興のスリルを演出した。この西洋音楽の価値観と和風を併存させるところに、武満を河端は重ね合わせたか。
 ちなみにこの尺八は、津山のリコーダーかもしれない。ハーディ・ガーディも笙に似た緊迫感を紡ぐ。

 西洋楽器も和楽器も無い。全てを等価値に、河端や津山は演奏している。本当に懐深い。

 (1)の最後でハウリング風の高音が高らかに轟き、演奏の消えていくさまが痛快だ。ノイズがすべてを凛と貫き、なおかつギターのフィードバックを切り裂いた。
 日本人のぼくが言うのも変な感じだが、禅/侘び寂びの論理を越えた美学を象徴するかのよう。非音楽を音楽に昇華した。

 宗家がライブで見せる、パワフルで痛快な発散を期待してはいけない。
 本盤は日本人のアイデンティティをてらいなく披露しつつ、なおかつ自由な音楽を奏でた興味深い実験だ。

 なお実験要素だけで終わらせないのが、河端のサービス精神。アルバム後半の2曲は、いくぶんリズム要素とセッションの味を深め、抑え気味ではあるがバンド・サウンドでの醍醐味を披露した。
 コンセプトを追求しながらも、さまざまな趣味嗜好に応えるところがAMTのエンターテイメントである。


Track list
1 Benzaiten 17:55
2 December Stops / Etekoraku / Etekobushi 19:07
3 Benzaiten Reprise / Benzaitenshu 18:18
4 Benzaiten Coda 14:05

Track list
Electric Guitar, Acoustic Guitar, Sitar [Electric], Bouzouki, Sho [Electric], Electronics, Hurdy Gurdy, Percussion, Field Recording, Voice, [Speed Guru] - 河端一
Bass, Voice, Recorder, Percussion, [Cosmic Joker] - 津山篤
Electric Guitar, Guitar Synthesizer, Voice, [Maratab] - 田畑満
Drums, [Another Dimension] - 砂十島NANI
Synthesizer, Percussion, Voice, [Dancin’king] - 東洋之
[God] - Justin Waters

Mastered By - 吉田達也
Producer, Engineer, Mixed By - 河端一

Recorded at Acid Mothers Temple, Oct. 2014 - Feb. 2015.
Dedicate to Kitajima Osamu and Takemitsu Toru.

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