TZ 7382:John Zorn "Dictée Liber Novus"(2010)

 書籍をテーマに作曲した現代音楽、2作品を収録した。双方ともファイルカード作曲の発展系な作品だろうか。

 ジャケットにはESPカードがデザインされ、ゾーンのオカルティック風味をシンプルに表現した。テクニックや数値の魔術性を追求ではなく、無秩序なブロックごとの連結を味わう作品。

 "Dictée"はアメリカで活躍した韓国人Theresa Hak-Kyung Chaの1982年出版、同名著作をテーマに作曲した。コラージュめいたノイズが混じりつつ、生演奏が幻想的に続く。めまぐるしさは無く、異物の唐突な結合が緩やかな頻度で提示された。

 即興か譜面かは分からない。つかみどころ無く、混沌が続く。断片的なパーカッションがメインで、メロディは比較的少ない。韓国語の朗読と散漫なサンプリングの味付けが、空虚さに拍車をかける。
 しかし終盤の繊細な風景はしみじみと奇麗だ。ロマンティックでミニマルな世界が軋み音と混ざりながら、ふくよかに展開される。
 難解だが不思議な美しさを持つ曲。韓国がテーマで尺八響くのも、なんか奇妙だ。
 
 "Liber Novus"は心理学者ユングの同名著作(邦題:赤の書)がテーマ。本書は1914-30年に書かれながら出版されず、2009年にようやく出版された。
 こちらの方がいくぶん分かりやすいか。やはりコラージュめいた箇所はあるし、唐突な場面転換はあるが。パーカッションとピアノがそれぞれメロディを冒頭から提示してくるためか。
 パートごとにテンポがまちまちなため振り回されるが、神秘的な雰囲気がそこかしこに漂う。全貌をつかみづらいとはいえ、あっちを齧りこっちを齧り聴きの内に、親しんでいけそう。逆に、この曲の音楽的な一貫性は今のところ聴き取れていない。
 
 この手の作品は作曲かせいぜい指揮に留めるジョン・ゾーンが「Dictée」ではサンプラー、「Liber Novus」はドイツ語ナレーションと、絡め手で演奏に参加してるのも珍しい。

Personnel:
「Dictée」
Cello, Voice [Korean Narration]:Okkyung Lee
Effects [Folky Effects], Sampler [Samples]:John Zorn
Piano, Voice [French Narration]:Sylvie Courvoisier
Shakuhachi, Flute [Bass], Clarinet:Ned Rothenberg
Vibraphone [Vibes], Percussion, Other [Wollesonics]:Kenny Wollesen

「Liber Novus」
Effects [Sound Effects]:David Slusser
Organ:John Medeski
Percussion:Kenny Wollesen
Piano:Stephen Gosling
Voice [German Narration]:John Zorn

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