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Ashford & Simpson 「Come As You Are」(1976)

 ちょっと流行を濃い目に取り入れて、隙無く整った。

 前作"I Wanna Be Selfish"(1974)から、ちょっと間をおいたリリースとなった、アシュフォード&シンプソンの3rdアルバム。
 幕開けのA1によるロマンティックな風味から、いきなり惹かれる。ボーカルがコーラスと絡み、奥行きある心地よさを作った。

 1stは9曲、2ndは10曲。だが本作は8曲に抑えた。5分台の曲が3曲あるけれど、それほど各曲が長いわけではない。少々、物足りない。
 基本は夫妻の自作曲だが、A2はヴァレリー・シンプソンの弟レイ・シンプソンと彼の音楽仲間ボビー・ジーン・ホール,Jrの作品。外部作曲家のテコ入れってほどではないが、夫妻以外の曲を入れて少々目先を変えたって印象だ。

 A4をアル・ゴーゴニが担当以外は、全てのアレンジをウィリアム・イートンが担当した。そのせいか、過去2作より雰囲気が明るくなった感じがする。
 ベースはフランシスコ・センテノが前作から継続参加だが、他のメンバーは一新。
 ドラムはスティーヴ・ガッド、ギターにエリック・ゲイルやジェフリー・ミラノフなどが起用なあたり、より売れっ子スタジオ・ミュージシャンを投入して力を入れたっぽい。

 演奏にもちろん不安は無いが過去作でのバンドっぽさから、よそ行きっぽい整った化粧に少々戸惑う。弦もブラスも大胆に前面へ並べて鮮やかな作りは、内省さや手作りっぽさが綺麗に消えて、洗練されてる。ぼくのマイナー趣味なせいとは思うが、あっさりしすぎて毒気を抜かれてしまった。
 
 けれども作曲は夫妻によるもの。アシュフォード&シンプソン節が減じたわけではない。決して本作で初めて、商業主義に魂を売ったわけではない。それは最初からだ。
 そもそも二人は職業作家も経験しており、マイナーだが良い物なんて価値観は無い。売れること、多くの人から高い評価を得る志向であり本作は望むところだろう。

 とはいえ過去2作のバンドっぽさ、ナイーブさが消えて、よりまとまり良く作った本作を受け入れられるか否かで、評価は変わる。
 チャートを見ると、夫妻は本作以降で売れ行きが上がっており、本作を足掛かりにキャリアを伸ばしたと言えるだろう。

 歌声だって悪くない。華やかに喉を震わせるヴァレリー・シンプソンの歌いっぷりは、実に見事。ニコラス・アシュフォードが絶妙の愛の手を入れて、縄をなうように鮮烈な歌声で魅せた。

 B1なんて、とても素晴らしい名曲だ。A面も良いが、B面の流れが抜群。
 ぼくの感想がちょっと歯切れ悪いのは、全2作の感想を引きずって本作を聴いてしまったため。本作をいきなり聴いたら、ラジオで唐突に本作から流れてきたら、ぐっと耳を奪われるだろう。
 ファンクやディスコっぽさもほんのり振りかけ、本作も完成度高く聴きごたえあるアルバムだ。

Track list
A1 It'll Come, It'll Come, It'll Come 2:53
A2 One More Try 3:26
A3 Believe In Me 5:20
A4 Caretaker 3:53
B1 Somebody Told A Lie 5:49
B2 Tell It All 5:15
B3 Sell The House 3:20
B4 It Came To Me 3:53

Personnel:
Producer - Nickolas Ashford, Valerie Simpson
Vocals [Voices] - Jo Armstead, Nickolas Ashford, Ray Simpson, Valerie Simpson
Arranged By - Al Gorgoni (tracks: A4), William Eaton (tracks: A1, A2, A3, B1, B2, B3, B4)
Bass - Francisco Centeno
Congas - Ralph MacDonald
Drums - Steve Gadd
Keyboards - Don Grolnick, Richard Tee
Guitar - Elliott Randall (tracks: A4), Eric Gale, Jeffrey Miranov (tracks: A4)
Piano - Valerie Simpson (tracks: B3)

Percussion - Ralph MacDonald
Horns - Walter Raim (tracks: A1, A3, B1)
Soloist, Guitar - Eric Gale (tracks: A2), Hugh McCracken (tracks: B2)
Soloist, Horns - George Young (2) (tracks: B1)
Soloist, Organ - Don Grolnick (tracks: B2)
Strings - Walter Raim (tracks: A1, A3, B1)

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