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John Coltrane 「My Favorite Things: Coltrane At Newport」(2007)

 63年と65年の"My Favorite Things"を聴き比べできる。

 63年と65年、ニューポート・ジャズ・フェスに出演したジョン・コルトレーン・カルテットのライブ音源をまとめて、07年にリリースしたアルバム。
 やたら拍手が近いので、オーディエンス録音だろうか。そのわりに演奏はPAアウトっぽいし、アナウンスも生々しいけれど。

 63年はロイ・ヘインズ、65年はエルヴィン・ジョーンズがドラムを叩いた。
 発売レーベルはインパルス。"A Love Supreme"(1964)の製作前夜であり、製作後。フリー路線を突き進むコルトレーンの分水嶺な時期と言えなくもない。

 もっともライブではシーツ・サウンドの展開をそのままにコルトレーンは吹きまくり。(1)でも冒頭のほのぼのしたテーマは、サックス・ソロの時点で無伴奏となって、手数多く音色を時に軋ませながらコルトレーンは休みなし。
 ソロ回しも無く、終盤でバタバタッとバンドが加わってエンディングに向かった。
 
 (2)はソプラノによるソロが呪術的に広がる。マッコイ・タイナーのピアノで曲名は分かる。ひとしきりアドリブで吹いたあと、テーマを紡いだコルトレーンはじわじわとフレーズを崩していく。

 しかし唯我独尊ではない。瑞々しいピアノ・ソロにスペースを開けて、サイドメンにもスポットを当てた。
 ちなみにピアノのソロもけっこう尺が長い。たっぷりとマッコイがスケール大きなフレーズをばら撒いた。

 コルトレーンはピアノ・ソロを受けてテーマをひとくさり。そして、やみくもなソロに突入した。フレーズの組み立てというより、楽器をパワフルに吹き倒す。
 全くノイジーな音のばらまきではないが、奔放に音が飛びながらロングトーンをふんだんに混ぜて、混沌な世界を表現した。

 ちなみにドラムとベースは幾分、自由。ピアノがきっちりとフレーズを刻み、ベースはテンポを維持しながらも時折アクセントを揺らす。
 そしてドラムはハイハットでグルーヴを維持しながら、ブラシみたいな軽い手さばきでスネアを叩いた。
 (2)では奔放なソロから、スパッとテーマに戻る瞬間のスマートさも良い。むやみにフリーに汚さない。エンディング近辺はあれこれ音を散らして、ざわめかせたけれど。

 この日の圧巻は(3)。テーマからソロを受けもったマッコイは、ここぞとばかりに鍵盤を弾き荒らした。
 ドラムのリズムへベースが吹きすさぶように低音を浴びせるなか、ピアノはぴたりとノリを合わせる。しかし頻繁にアクセントをフレーズに差し込んで、ピアノ自身がテンポを牽引した。
 ピアノとドラムが手を止めた中、しばしベースだけがパルスのようなオスティナートを続ける。ふと自分一人だ、と気づいたかのようにフレーズを遊ばせるベースのセンスが素晴らしい。

 やがてドラムやサックスも加わり、場面が転換する。主役がコルトレーンに移った。
 テナーに持ち替えたコルトレーンは、ひしゃげた音色で疾走する。ピアノも下げて、ドラムだけを引き連れて。
 ラスト一分。ピアノやベースも加わる。たっぷりとサックスのソロを振りまいたあとだけに、急に風景がカラフルになった。

 65年のセッション、(4)以降ではリズムの解釈が幅広く変化した気がする。
 マッコイのピアノはポリリズミックなアプローチでドラムと絡み、ノリを多様に複雑に揺らした。小節線を意識しながらも自由にまたぎ、揺らす。
 エルヴィンのドラムもタイトに刻みながらも、ちょっと垂れるような含みを持った。

 あとはベース。ギャリソンは着実だが、別に武骨なわけではない。テンポ・キープにもこだわらず、体感リズムで淡々と弦をはじいた。三者三様に弾くことで、中心の無い混沌を嫌ったのだろう。
 ベースががっしりとアンサンブルをまとめた。

 (5)前半のピアノ・ソロは秩序と理性で、明瞭な複雑さを作った。だがコルトレーンが現れたとたん、準拠枠は豪快に吹き飛ばされる。
 テナーを軋ませノイズ成分をたっぷり含んだサックスは、本盤前半の2年前よりも自由度を増している。吹き倒すフレーズは、無秩序さと理詰めの振れ幅がぐんっと柔軟かつ幅広くなった。

 そのグルーヴ感の多彩さは、(6)でも同様。ピアノ・トリオ編成でマッコイがソロを取る前半は、細かい揺れを鷹揚に吹き飛ばしながら大空を高らかに飛翔するような開放感あり。主役はピアノだけど、トリオ全員が一丸となってうねった。

 コルトレーンが現れると風景は一変。さらにカラフルさと混沌味を増す。ソプラノ・サックスで鋭く切り裂く一方で、ちょっとしたフレーズのひねりが爽やかな風を呼んだ。
 このテイクも15分とそれなりに長めの尺ながら、ソロを丁寧に耳で追っていくと飽きる暇がない。

 ブートっぽい音質で、音のバランスは完璧とは言いがたい。オフィシャルで発売されるだけの補正はされているけれど。あくまでもファンもしくはある程度、鷹揚に聴ける人向け。
 初めてのコルトレーンならば、当時の公式盤を薦める。とはいえこういう発掘音源も美味しいね。ライブならではの瞬発力が楽しめる。


Track list:
Newport '63
1 I Want To Talk About You 9:41
2 My Favorite Things 17:20
3 Impressions 23:30
Newport '65
4 Introduction By Father Norman O'Connor 1:08
5 One Down, One Up 12:42
6 My Favorite Things 15:14

Personnel:
Soprano Saxophone, Tenor Saxophone - John Coltrane
Piano - McCoy Tyner
Bass - Jimmy Garrison
Drums - Elvin Jones (tracks: 5, 6), Roy Haynes (tracks: 1 to 3)
Tracks 1 - 3 recorded Sunday, July 7, 1963, Newport Jazz Festival, Freebody Park, Newport, Rhode Island.
Tracks 4 - 6 recorded Friday, July 2, 1965, Newport Jazz Festival, Freebody Park, Newport, Rhode Island.

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