TZ 8169:Samech "Quachatta"(2012)

 Va,Vc,bの中低域より下の音域で弦楽三重奏を組み、シンプルなパーカッションを加えたアコースティックな、ポーランドの室内楽カルテット。


 TZADIKには2015年現在で本盤のみ発売。現在の活動状況はよくわからない。Samekhとはヘブライ語で円弧のように書かれる文字であり、無限の象徴としてバンド名にしたらしい。
 選曲はユダヤのトラッドを基本とある、全10曲中4曲がAnna Ostachowskaの、1曲がMarek LewandowskiとMagdalena Plutaの作品。他4曲でクレジットあるAgata Krauzやユニット名Davkaがトラッドの作曲家か。ちょっと検索したが、それらしき情報に行きつけず。

 中域主体のアンサンブルだが、メインのメロディはビオラが努める。さほど違和感なくふくよかで温かい整ったアレンジの弦楽三重奏を聴かせた。パーカッションは出しゃばらず、静かにビートを重ねる。

 一曲目から弦の刻みをリフにパーカッションと譜割併せ、ぐいぐいくる。メロディはビオラからチェロにソロを繋ぎ、ブレイクは二人のユニゾンで高らかに。コントラバスが下からえぐり、再びビオラのソロ。好きなパターンのアレンジだ。

 派手なインプロ合戦では無く、アドリブ・ソロを基調にカッチリとアレンジされている。隅々まで気を配ったクラシカルな素養を感じる編曲は、勇ましくも丁寧な弦のアンサンブルを美味しく味わえた。力押しだけでなく(3)を筆頭にロマンティックな雰囲気を出す、イントロのメリハリも忘れない。
 全員が弦楽器を巧みに操り、パーカッションが躍動感を出す。ウッドベースがそれら二つの要素を内包し、アンサンブルを強固につないだ。

 クレヅマー独特の切なさに加え、欧州風の整った情感も滲む響きをアルバムに感じた。前衛要素はほぼ無く、滑らかに親しみやすい雰囲気。(4)の中間部でメカニカルに響くとこなど、ちょっと都会的なアプローチもあるけれど。
 (7)での重厚路線も素敵。重々しく低音弦が鳴り、おもむろにビオラがソロを取る音像がきれいだ。少しばかり老成した空気がしっとり響いた。
 
 アルバム全体で弦の中域がちょっと痩せて聴こえるのは、ぼくのステレオ環境のせい?やけに高音を強調したミックスと思う。ともあれサウンドは硬質で軽やかに駈けていく。
 一曲がさほど長く無く、さくさくと味わえるのが良い。次のアルバムも楽しみだ。

Personnel:
Marek Lewandowski (Marqs): Double Bass
Anna Ostachowska (Osta): Viola
Magdalena Pluta: Cello
Robert Sztorc: Percussion

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