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Spinners 「Spinners」(1973)

 心機一転、甘くて上品かつリード・ボーカルをしっかり立てた。

 スピナーズの3rdで、モータウンからアトランティックに移籍の第一弾。彼らはこのレーベルで約10年、全盛期を迎えることになる。
 彼らの代表作っていうと、本盤をイメージする人が多いのではなかろうか。うん、たしかにスピナーズを聴くなら、まず本盤が手っ取り早いかも。

 彼らは61年にTri-Phi Recordsからレコード・デビュー。モータウンへ62年に移籍しシングルを数々、アルバム2枚をリリースするもパッとせず。
 移籍のとたん、B4/A5で切ったシングルが大ヒット。B面が全米3位、引っ張られてA面面も77位まであがった。
 ほかにB5(全米4位),B1(同11位)もシングルで切られてる。
 
 全2作もモータウンは手を抜いてはいなかった。けれども本盤でスピナーズは、より洗練さを選ぶ。
 その結果、いきなり最高のスタート・ダッシュを彼らは本盤で決めた。

 プロデューサーはトム・ベル。つまりフィラデルフィア。録音もシグマだし、バックのミュージシャンもMFSB。しかしPIRほどストリングスを豊富に降り注がせず、味付け程度にとどめた。
 コーラスをいくぶん抑え気味なのも本盤の特徴だ。G.C. キャメロンからフィリップ・ウィンにリード・ボーカルを変えたスピナーズは、ウィンを徹底的に前へ出した。
 ボーカル・グループにもかかわらず。曲によっては女性コーラスの投入もいとわない。そのへん、冷徹な作りだ。

 サウンドはアップ・テンポも控えめ。ダンサブルさは味付け程度で、きれいなメロディをじっくり聴かせる路線である。子供向けの刺激的で一過性よりも、もう少し上の世代を狙ったのでは。
 時にサザン・ソウルやゴスペル風の熱さも秘めながら、基本的スタンスは東海岸より。まさにフィラデルフィアのいなたい風情で、精一杯ピシッと決めた。
 
 強烈に耳を引っ張らない。しかしそっとそばにいる。そんないい塩梅の大人な距離感を意識したかのようなサウンドが聴ける。
 
 楽曲は粒ぞろい。きれいで魅力的なメロディがずらり並んだ。
 手なんてまったく抜いてない。きっちりと作りこんだ。作曲者はバラバラ。統一性はさておいて、伸びやかなウィンのボーカルを軸に素敵なソウルを聴かせる。
 特にA面がばっちり。B面はドリーミーさを演出か、エレキ・シタールみたいなぺなぺなエレキ・ギターとか、ちょっと古臭い。だけど、そんなのはたいした問題じゃない。

 シングルに力を入れて、あとは埋め草って構成じゃない。一曲それぞれを少しづつ方向性変えて、アルバム全体で味わい深く作った。しかも過激な突出差が無いため、とても滑らかに聴ける。

Track list
A1 Just Can't Get You Out Of My Mind 3:42
A2 Just You And Me Baby 2:56
A3 Don't Let The Green Grass Fool You 4:01
A4 I Could Never (Repay Your Love) 6:56
A5 I'll Be Around 3:10
B1 One Of A Kind (Love Affair) 3:31
B2 We Belong Together 4:12
B3 Ghetto Child 3:47
B4 How Could I Let You Get Away 3:46
B5 Could It Be I'm Falling In Love 4:13

Personnel:
Billy Henderson, Bobby Smith, Philippé Wynne, Henry Fambrough, Pervis Jackson - vocals

Thom Bell - producer, arranger, conductor
Roland Chambers, Norman Harris, Bobby Eli - guitars
Thom Bell - pianos
Ronnie Baker - bass guitar
Earl Young - drums
Larry Washington - congas, bongos
Vince Montana - vibes, marimbas
MFSB - orchestration
Jack Faith - alto saxophone, flute
Rocco Bene, Bobby Hartzell - trumpet
Joe DeAnglis, Robert Martin - French horn
Freddie Joiner, Bobby Moore, Richie Genevese, Eddie Keskarella - trombone
Linda Creed, Barbara Ingram, Carla Benson, Yvette Benton - backing vocals
Don Renaldo - strings

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