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Nick Lowe 「Labour of Lust」(1979)

 作家志向の強い、乾いたポップスがちりばめられた。

 ニック・ロウの2rdは「恋する二人(Cruel to Be Kind)」で幕を開ける。この60年代直系の甘くて軽いポップスは聴いた人が多いだろう。てっきり本曲みたいにツルツルのキャッチーな曲が詰まってる、と期待して聴いたら当てが外れる。

 本盤はバンド志向でなく、むしろロウの多様で冷静かつ屈折した姿勢が表現されてる。 アメリカンな軽さよりも、英国的な辛さが滲んだ。
 売れ線ならば、もっと安易に"Cruel to Be Kind"系で攻めたらいいのに。そんな道をロウは選ばなかった。

 この盤は英と米で収録曲が微妙に異なる。具体的には英盤から"Endless Grey Ribbon"が抜かれ、一部の曲順を変更。"American Squirm"が足された。
 話題性って意味では"American Squirm"が加わったのは大きい。ここではエルヴィス・コステロがコーラスで参加。ベースとドラムはアトラクションズのブルースとピート・トーマスが弾いている。
 
 もっとも現在では双方の曲を収録して、"Basing Street"をボートラに足した13曲入りのYep Rocが2011年に再発した盤が流通してる。これは本盤A2のシングルB面曲。

 他にゲストでは、ヒューイ・ルイスが"Born Fighter"でハーモニカを吹いてるのも目立つ。本盤は79年のリリースで、ヒューイがブレイクする前。
 つまりヒューイ・ルイス&ニューズでデビュー直前だ。どういう人脈で録音に参加したのやら。
 
 本盤は基本的にバンド的に同じメンバーで録音された。ギターはデイブ・エドモンズとビリー・ブレマー、ドラムがテリー・ウィリアムズ。要するに、ロウと後にロックパイルを組むメンバーだ。ロウはベースを全編で弾いている。
 そのわりに本盤は、バンド・サウンドって風情は希薄。もっとバラエティに富んでいる。豪華って方向性じゃなく、ポップスやニューウェーブを行き来して、一つ所に留まらないイメージ。

 本盤は作家志向が強い。基本はすべてロウの作曲だ。
 例外は"Cruel To Be Kind"はブリンズレー・シュウォーツ時代にイアン・ゴムと書いた曲。本盤に収録は再録だそう。知らなかった。
 他に"Switch Board Susan"が、同時期に英サウスエンドで活躍したLegendのメンバー、ミッキー・ジャプの曲。あとは"Love So Fine"を本盤参加のメンバー4人で共作してる。
 同時期に同じメンバーで録音したデイブ・エドモンズの"Repeat When Necessary"(1979)や、他にロックパイル唯一のアルバム"Seconds of Pleasure"(1980),デイブ・エドモンズの前後の諸作"Tracks on Wax 4"(1978)や"Twangin..."(1981)は、色んな人の曲をちりばめたのに。

 ロウは趣味性を追求よりも、自分の音楽を突き詰めたかったのだろう。実際に、作曲をする才能にも恵まれていたということで。とはいえコステロほどビジネス的に炸裂はしなかったけれど。

 本盤の曲はまちまち。"Cruel To Be Kind"的なポップさは、それこそ"American Squirm"や"Endless Grey Ribbon"、"Dose Of You"に香りを感じなくもない。
 だがそこへカントリー色やフォークの味を足して、少しづつ違う表情を作った。
 "Love So Fine"には典型的なR&Bっぽさもある。

 さらに"You Make Me"みたいに内省的な曲や、重ための"Cracking Up"なんて曲も並べる。後者のB面"Basing Street"も、ナイーブで沈鬱な曲だ。ボートラで"Basing Street"が配置されたため、本盤をYep Roc盤で聴くとアルバムの余韻が実に暗い。
 "Love So Fine"で終わるなら、いくぶん明るいムードなのに。

 本盤の1stシングルは"Cruel To Be Kind/Endless Grey Ribbon"。これは分かる。とてもキャッチーな仕上がりだ。
 なのに2ndシングルが"Cracking Up/Basing Street"。言っちゃなんだけど、台無しだよ、色々と。他に"Switch Board Susan/Basing Street"ってシングルもアメリカでは切った。よほど"Basing Street"が気に入ってたみたい。

 ポップスで押すこともできたのに。そんな安易な道をロウは選ばなかった。そんなこだわりと頑固な作家性が表出したアルバムだ。
 

Track list
1 Cruel To Be Kind 3:29
2 Cracking Up 2:58
3 Big Kick, Plain Scrap 2:27
4 American Squirm 2:30
5 Born Fighter 3:08
6 You Make Me 1:51
7 Skin Deep 3:13
8 Switchboard Susan 3:47
9 Endless Grey Ribbon 3:15
10 Without Love 2:28
11 Dose Of You 3:19
12 Love So Fine 3:52
13 Basing Street 2:32
 
Personnel:
Nick Lowe - bass and vocals
Dave Edmunds - rhythm and solo guitars and backing vocals
Billy Bremner - rhythm and solo guitars and backing vocals
Terry Williams - drums

Huey Lewis - harmonica on "Born Fighter"
Bob Andrews - Oberheim on "Endless Grey Ribbon"
Elvis Costello - backing vocals on "American Squirm"
Bruce Thomas - bass on "American Squirm"
Pete Thomas - drums on "American Squirm"

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