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Curtis Mayfield 「Take It To The Streets」(1991)

 たぶん新機軸狙い。しかし事故で展開は叶わなかった。

 カーティス・メイフィールドが実質的に主導権を取った、最後のアルバム。本盤発売の数か月後、ステージから照明の落下事故で半身不随になってしまう。
 本盤の5年後に"New World Order"(1996)も出したが、それは周りの手厚いサポートを受けて絞り出したアルバム。それはそれで尊い仕上がりではあったが、本質的にカーティスのソロ・アルバムとは言いがたかった。

 本盤は正直パッとしなかった、70年代後半から80年代のキャリアから脱却するためのアルバムだったと思う。76年にそれまでの社会派路線を捨て、スイートなディスコ寄りを選んだカーティス。
 出来とは裏腹に、第一線を維持できたとは言いがたい。90年はCD再発が本格化して過去のカタログがフラットに聴かれ、ベテランの再評価が始まった時代だ。カーティスもせっかくなら、もともとの素養である社会派に戻り自由に音楽を作りたかったのではないか。
 
 スタジオ・アルバムで言うと"We Come in Peace with a Message of Love" (1985)から6年ぶり。しかし本盤は満を持してって感じではない。長年スタジオに籠って作り上げたのではなく、短期間でさっと作ったように聴こえる。
 最新鋭の機材である打ち込みなども意識しながら。

 基本はカーティスの自作をほぼ一人きりの多重録音で、ドラムとベースのみミュージシャンを雇った。
 (2), (7)だけ他人の曲で外部のミュージシャンとプロデュースも一人。ただしその二人Michael BrownとTony Brownは、前作"We Come~"にも参加している。カーティスのバック・バンド、もしくは気心知れた仲とも思われる。二人は兄弟かな?
 たぶん身内の若手にチャンスをカーティスが与えたのだろう。

 別に最新流行を求めて、二人にチャンスを与えたとも考えづらい。(4)なんてカーティスの自作だが、若作りかと思えるほどディスコ寄りの音だし。
 
 発売当時、伝説のカーティスの新譜!と喜び勇んで聴いたが、地味だなと思った記憶がある。ファルセットだけでなく地声を使ってストリート感ある味わいと、甘いポップさの双方を狙った作りが本盤の方向性だ。

 過去作もろくに聴いたことが無く、いきなり本盤に触れた耳ではベテランの手堅さが先に立って、刺激まで聴き取れなかった。
 今の耳だと、カーティスの派手さと地道さをバランスとった出来と感じる。過去の方法論にはすがらない。流行へどっぷり身を浸しもしない。よく言えば中庸、悪く言えば中途半端。そんな感じだ。

 甘さからハードボイルドな世界観に向かいたかったのだろう。起死回生を狙い、意欲は感じられた。ただし妙に流行狙いな音で古めかしくなってしまい、楽曲の良さが映えないのが惜しい。
 スカスカなアレンジも生演奏時代のスリルも伺える一方で、若干チープさも漂う。
 この時代は、生演奏がダサくて打ち込みに以降気味だったけれど。生演奏で勝負できるベテランだからこそ、むやみに流行の時流に乗って欲しくはなかった。

 これまでのアルバムと比較しても、小粒な印象は否めない。もしカーティスが事故にあっていなかったら、本盤の蓄積とツアーを重ねて更にこなれた傑作を作っていたろうに。

Track list
1 Homeless 7:35
2 Got To Be Real 4:48
3 Do Be Down 4:08
4 Who Was That Lady 4:53
5 On And On 3:42
6 He's A Fly Guy 4:58
7 Don't Push 4:25
8 I Mo Git U Sucka 5:00

Personnel:
Vocals, Guitar, Keyboards, Backing Vocals, Producer, Arranged By, Orchestrated By, Mixed By - Curtis Mayfield

Backing Vocals - The True Saints
Bass - Lebron Scott
Drum Programming - Carlos Glover
Guitar - Gary Thompson, Tony Brown (tracks: 2, 7)
Keyboards - Michael Brown (tracks: 2, 7)
Percussion - Luis Stefanell

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