TZ 8314:John Zorn "The Alchemist"(2014)

 ゾーンの生誕60歳記念ツアーで披露された、クラシック寄り新作2作品を収録した。実験性と聴きやすさを並列した綺麗な曲だ。


 "The Alchemist"はゾーンの弦楽四重奏曲で、6番目の作品になるそう。作品番号の順であまり意識していない。そのうち整理しよう。テーマは16世紀の錬金術師ジョン・ディーここで楽曲構成に軽く振れたコラムがあった。本盤のライナーにもコメントが細かくあるが、字が小さく飾り文字のため、読み解けていない。

 楽曲は軋み音や強いピチカートなどの特殊奏法も頻出するが、基本的にはいわゆる音楽から逸脱はしない。CDでは20分1トラックだが、11の楽章に分かれてる。ここで聴けるのは神秘性が滲ます怪しさ。神秘的な手順と謎めいた手法が産む胡散臭さと不可思議さを音楽で表現した。
 飛び交う素早い旋律の奔流は涼やかで影をまとう。メロディはしばしば断片のように鋭く展開し、勇ましく突き進んだ。全般的に聴きやすいが、ときどき激しい特殊奏法が振り撒かれる。

 とはいえゾーンの作品として、実験性とラウンジ的な親しみやすさのちょうど中間に位置した、歯ごたえのある美しい作品だと思う。なんか惹かれる。聴くほどに、色々と気づくし、前衛実験に特化したとっつきにくさも少ない。ロマン派以降の情熱をぐさぐさに切り崩した感じもした。

 なおこの曲はゾーンの生誕60歳記念ツアーでも演奏あり。Youtubeに音だけだがアップあった。演奏は本盤と同じメンバーにて。ロッテルダムの13年7月13日に、North Sea Jazz Festivalにて。時間軸では逆か。このライブで披露したあと、同年10月に録音された。


 併収"Earthspirit"は女性三人の無伴奏ハーモニー。クラシカルで宗教的な荘厳さを漂わす。アイルランドにある先史時代の遺跡ニューグランジがテーマ。古代ケルトの神聖な文章を歌ってるという。Amerginとあるが、これのことかな?ゾーンは本当にさまざまなオカルティックな題材から楽曲を作るなあ。

 この曲も美しい。スピーディに声が飛び交う。テクニカルに音は跳躍するが、人間の声ゆえに滅茶苦茶な展開は無い。厳粛さと神秘性が滲み、時にリズミカルに畳み掛けた。
 譜面を見たら何か分かることがあるのかもしれないが、音だけからははるか昔の神へ捧げる音楽を聴いてるかのよう。和音の響きが古めかしく、透き通る清涼さあり。

 本盤の3人によるライブ映像が断片だがYoutubeにあった。2013年9月18日、NYのメトロポリタン美術館でのライブと思う。これもゾーンの生誕60歳記念ツアーの一環だった。詳しい当日のプログラムはこちら。本盤収録の音源は、この演奏後にスタジオ録音だろうか。


Personnel:
"The Alchemist"
Pauline Kim: Violin
Jesse Mills: Violin
David Fulmer: Violia
Jay Campbell: Cello

"Earthspirit"
Mellissa Hughes: Voice
Jane Sheldon: Voice
Kirsten Sollek: Voice


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