TZ 7321:John Zorn "Music for Children"(1998/2009)

 Music Romanceシリーズの第一弾で発表し、今は売り切れ廃盤。ぼくは10年後の再発盤で聴いている。再発盤では(7)でバスドラと、ルー・リードのギター・フィードバックがダビングを実施。全面リマスターも施された。

 ジャケットのイラストはヘンリー・ダーガー、写真はハンス・ベルメールClaude Cahun。人形が天野可淡でテキストはエミール・シオランと、どこか歪んだ価値観の美を追求した。

 グロテスクでラウンジなアンサンブルがミュージック・ロマンスのコンセプト。が曲ごとにメンバーが変わり、丁寧でデカダンなサウンドが紡がれる。後にジョン・ゾーンが多用するサウンドの初期傑作だ。ゾーンは作曲に留まらず、(7)でノイズ楽器などで楽器演奏もあり。(5)ではAsを吹くが"ゲスト"と表記有が興味深い。
 あくまで本盤はバンド"Prelapse"のメンバー、Jeff Hudginsがサックス役のようだ。なおPrelapseの演奏は、Naked Cityそのままの高速スラッシュなつぎはぎサウンド。

 10年後のダビングを除いても、本盤は89年から98年まで長期の録音音源が一枚にまとまってる。Naked City"Torture Garden"(1990)の録音頃から、平行して本盤の音源が吹き込まれていたらしい。
 構成は"Prelapse"が3曲。あとは弦と鍵盤が曲ごとに主役を取り合い、小編成で音楽を紡ぐ。ファイルカード的な鋭い場面展開や、高速即興に通じる素早いフレーズはそこかしこで聴ける。しかし全体のイメージはあくまで、おっとりと落ち着きを崩さない。
 
 どこか残酷なサドマゾの雰囲気が漂う。"Music For Children"と銘打ちつつ、鞭打ちっぽい風切り音をふんだんに入れる(3)からして、趣味が悪い。そう、悪趣味がキーワード。ただし音楽は美しさを保つ。この嫌らしさが狙いの一つか。歪んだ貴族風味と言おうか。

 ルー・リードのダビングが施された(9)は20分にもわたる長尺で、エドガー・ヴァレーズに捧げたそう。風きり音はわずかにモーターの響きも交じってるような。機械臭の漂う実音インダストリアル・ノイズだ。
 ダビングのルー・リードも効果はあるが、味付け程度。話題性狙いの話半分で聴いたほうがいいかもしれない。15分過ぎの中盤以降で荒々しいが静かにギター・フィードバックを載せるのみ。

 アルバム全体で見た場合、後年のゾーンの作品群から見ると、今一つ寄せ集め感が拭えない。多作に至る前の助走、習作かもしれない。あくまでアルバム・コンセプト、の意味で。個々の楽曲の完成度は高い。

Personnel:
Prelapse
Mason Wendell: Bas, Vocals
Jeff Hudgins: Alto Sax
Dane Johnson: Guitar
Alex Lacamoire: Keyboards
Andy Sanesi: Drums

David Abel: Violin
Cyro Baptista: Percussion, Vocals
Greg Cohen: Bass
Anthony Coleman: Celeste Music Box
Erik Friedlander: Cello
Marc Ribot: Guitar
Julie Steinberg: Piano
John Zorn: Alto Sax, Three Wind Machines, Two Acoustic Feedback Systems, Bass Drums

(Over Dubbing)
William Winant: Percussion, Bass Drums
Lou Reed: Guitar Feedback

 なお(3)はカナダで2013年10月25日に、まったく別のミュージシャンによるライブ映像がYoutubeにあった。譜面があるのか。



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