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斎藤圭土 「Piano Blues & Boogie Woogie」(2018)

 きれいな音でファンキーに響くブギウギ・ピアノを受け入れられるか?

 この盤は、踏み絵みたいなものだ。
 時代的な価値観のみで観念的にブギウギを捉えてしまうと、ブギウギ・ピアノは籠った音色でないとピンとこないって意見が産まれてしまう。

 しかし1950年代以前の音源がひしゃげてたのは、オリジナルのピアノが潰れてたわけじゃない。録音技術のせいだ。
 当時は多少、ホンキートンクだったり酒場の片隅に置かれて響きがドライだったかもしれない。
 けれど「古臭い音こそがブギウギ」って思い込んでしまったら、本盤みたいな音楽を素直に受け入れられない。
 
 本盤をぱっと聴いたとき、そういう固定観念に囚われぬように聴いたつもりだ。きちんとしたスタジオ録音盤だから、ピアノがきれいに鳴ってたもので。
 斎藤圭土はまさにブギウギを意識したピアノを弾き続け、細野晴臣の近年のライブ・バンドにも参加してきた。兄弟で連弾ピアノ・ユニットのレ・フレールを02年から活動させるベテランだ。

 経歴を見るとルクセンブルク国立音楽学校に留学してクラシック・ピアノをきちんと学んでる。しかし無闇に繊細なタッチでなく、荒々しい指さばきで豪快にブギウギを叩きのめした。
 
 本盤はソロ名義では"Boogie Woogie Far East"(2008)に次いで、10年ぶりの2ndにあたる、のかな。
 15曲入りで、冒頭から11曲がスタンダード、というか往年の名曲をずらり。12曲目から斎藤のオリジナルを並べて。じわじわと自分の世界にモーフィングするスタイルを取った。
 
 小細工や他の音は一切なし。ソロ・ピアノでたっぷりとブギウギを弾きまくった。

 荒っぽい指さばきと書いたが、テクニックは確か。冒頭から痛快に飛ばし、(6)でじっくりロマンティックに浸らせる。これが見事なペース配分だと思う。
 ブギウギって、数曲なら集中力が効く。ともすれば単調になって苦行的に聴き進めてしまいがちだが、アルバム一枚でまとめて聴かせる工夫はキチンと施された。
 この辺はブギウギにずっと向かい合い、ホールで聴かせるための演出を心掛けてきたベテランならでは、だろう。
 逆に当時の音源集だと、どうしても「全曲を網羅」とか「時系列」って学究的な意識が浮かんでしまい、アルバムとしてメリハリがつかない。

 各曲の演奏もばっちりグルーヴィ。数分とコンパクトにまとめたが、いわゆる譜面通り弾いて終わりってわけじゃなく、アドリブ要素もあり。いっぽうで、むやみに現代風解釈や斎藤の個性をアピールって自我に進まず、オリジナルのムードを生かしてる。
 変にテンポを崩したり、暴れさせない。淡々と確かなテンポ感で強靭に弾きつつも、ワイルドさを常に漂わせた。
 このストイックなバランス感覚が魅力だ。懐古厨にも現代解釈マニアにも、双方にアピールする目配りをした。

 (14)で拍頭にもアクセントをフラットに置いて、妙に浮遊感ある曲調も面白かった。ブギウギとラグタイムを混ぜた風情。途中でアクセントがひょいひょい飛んで、ノリがどんどん変わっていく。斎藤が作曲と演奏の、技巧的な意地をみせたか。

 斉藤は本アルバムで前半にテンションを上げ、緩やかにしっとりした世界へ導いた。ブギウギの躍動感を残しつつ。
 最終曲の静かなバラードは、ブギウギに日本的な情緒を溶け込ませてる。日本人ならではのアプローチと言える。ぼくはこういうの、あざとくならず上手くいけば好きだ。そしてこの曲は、上手くいってると思う。演奏が上手すぎて、テンポが揺れないのがむしろ惜しい。
 

Track list
1.Answer to The Boogie
2.Pinetop's Boogie Woogiee
3.After Hourse
4.State Street Jive~Cow Cow Bluee
5.Suitcase Bluese
6.At The Windowe
7.St. Louis Bluese
8.Black Fantasye
9.How Long Bluese
10.Just For Youe
11.Freight Train Bluese
12.Freight Train Boogie Woogiee
13.Lonesome Bluese
14.A Left Hand Like God ~in honor of Boogie Woogie masters
15.Life Goes One

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