TZ 8172:Gabriele Coen "Yiddish Melodies In Jazz"(2013)

 スリリングだが無闇に鋭く狙わず、おっとりしたスリルだ。イタリア・ジャズの奥深さを味わえる一枚。ディキシーやスイングをテーマのクレツマー・ジャズだが、奇妙にちぐはぐに浮遊するアンサンブルのノリが、不思議な魅力を醸し出した。


 別々に楽器を録音し、無理やり一本のテープへまとめたかのよう。サックスが長尺ソロの後ろで、ギターやピアノが無造作にカウンターのフレーズを当てる。それがまた、変てこにギクシャクして面白い。

Gabriele Coenはイタリアの木管奏者。Wikiによると複数のバンドを平行活動させ、活発にCDもリリースしてる。
本作はTZADIKでは2作目、"Awakening"(2010)に次ぐ盤となる。サイドメンは前作と同じ。ゲストを招かず、このバンド"Jewish Experience"だけで吹き込んだ。(1)と(6)がトラッド。(1)はフリーなフレーズが頻出し、オリジナルかと思った。(6)のおっとりしたユニゾンの加減も美しい。

(4)と(8)がガブリエレのオリジナル。(4)でのワウをふわふわ噛ませたエレキギターのソロが心地良い。あとの曲はカバーかな。
(2)がAbe Schwartz(20年代に活躍のルーマニア出身クレツマー作曲家) 、(3)はMickey Katz(第二次世界大戦頃に活躍した米のユダヤ人コメディアン/音楽家)の曲。
(5)を作曲したNellie Casmanは20~30年代に活動したロシア系ユダヤ人の歌手。クラシカルなクラリネットが、クラシカルで小粋なスイングを表現した。だけどスピーディなフレーズ使いは現代風に洗練され、さらにドタバタと刻むドラムが性急なスリルを楽曲へ与えてる。

(7)はアンドリュー・シスターズの曲だが、元は1932年に作曲のユダヤ系ジャズ・スタンダード。これもクラリネットのソロが渋く、ピアノが温かく盛り立てた。エレキギター・ソロで一転、ディストーション効かせてアップテンポに突っ込む。続くピアノも表情をガラリ変え、フリーっぽいフレーズも混ぜてきた。多才だ。
(9)は1925年にWillie and Eugene Howardが録音したスタンダード。 (10)は1920年に作られた曲らしい。

このように20世紀初頭の楽曲を多く採用してるが、古めかしさや懐古趣味は無い。たぶん古びたところはクレツマー風味の切ないメロディに埋もれてる。むしろアレンジの奇妙さやフリー寄りのフレーズが、現代性を強調した。
はたき込むドラミングなLuca Caponiの、アクセントが変てこなリズムも楽しい。変拍子じゃないのにどっか、つんのめったりタメるビート感だ。

つくづく本盤、サイドメンも個性ある音を出す。Lutte Bergのエレキギターは、柔らかな音色でフリーからスタンダードまで幅広いアプローチのアドリブだ。
このバンドは活発な活動してるらしく、検索の最中にこんなページも見つけた。
AmazonでGabriele Coenの盤はパッと出てこない。輸入盤屋をチェックかな。全員に光る才能をびんびん感じた。

Personnel:
Gabriele Coen: Soprano And Tenor Saxes, Clarinet
Lutte Berg: Electric Guitar
Luca Caponi: Drums
Marco Loddo: Double Bass
Pietro Lussu: Piano


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