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Mal Waldron Quintet 「Hard Talk」(1974)

 情感的なピアノの異物さで、クールさを強調したジャズ。

 マル・ウォルドロンのリーダー作ながら、むしろ彼の特異性が際立ったアルバムだ。Enjaから、オーナーのホルスト・ウェーバーがプロデュースした。ホルストのアメリカン・ジャズへ屈折した愛情がにじみ出る。
 ホルストは情感やファンキーさを、共感よりもむしろ異物もしくは異文化の象徴と崇め気味な傾向を感じる。理知的で整然たる美学の西洋文化の対極として。

 本盤もマル以外は基本的に欧州勢。初共演ってわけでもなさそうだが、硬質なジャズの枠組みに、情感の固まりなマルのピアノをねじ込んだ風情あり。
 音源は74年に西ドイツのニュルンベルクで行われたジャズ・フェスでのライブ音源。前後に本盤と同様メンツによる吹きこみが行われていないことから、マル側でなくフェス側の仕切りで行われたセッションではないか。

 楽曲は全てマルによる。(1)は前Enja盤"Up Popped the Devil"(1973)にも収録の新曲で、あとは書き下ろしっぽい作品が並ぶ。
 LPでは(1)がA面、(2)(3)がB面。CD再発にあたり(4)が足された。同じ日の音源なのと、ライブ終盤の盛り上がりを追体験できる点で(4)のボートラは嬉しい。

 なんとも隙間が多く線の細い録音で、思い切りボリュームを上げないと迫力が出ない。 呪術的なピアノが延々と鳴り、ベースが激しくうねってドラムが煽る。
 そこへ2管のフロントが、フリージャズ寄りの青白いソロを加えるかっこうだ。

 マルの持ち味を味わうには、むしろフロント2管は邪魔。鋭利な鋭いフレーズと、漆黒のピアノによるグルーヴを鮮やかに対比させるベクトル感なためだ。
 フロントがソロを取った瞬間に、風景は変わる。すなわちマルの思惑と違う論理が表出してしまう。

 フロント勢が特にマルへ新鮮な要素を与えてはいない。マルに乗っかって自己表現に走った。
 特にマルもフロントたちに併せるつもりが無いから、なおさら。自分のソロでは熱く鍵盤を叩くが、あとはバッキングに徹してしまう。だからマルの煮えたぎるノリを求めて聴くと、フロント勢のアドリブ時間がむしろ早く終わらないかと思うしまつ。

 ピアノ・トリオの構図が一番楽しい。ドラムやベースもソロの場面では自己主張に走ってしまい、そこでリズムが寸断される。

 マルはアンサンブル調和でなく、自分の場面以外は大きく引くことで自らの音楽を描いた。演奏の出来がいいだけに、もどかしさが募る。

Track list
1 Snake Out 12:25
2 Hard Talk 19:14
3 Russian Melody 6:03
4 Hurray For Herbie 13:27

Personnel:
Piano, Composed By – Mal Waldron
Soprano Saxophone – Steve Lacy
Bass – Isla Eckinger
Cornet – Manfred Schoof
Drums – Allen Blairman
Producer – Horst Weber

Recorded live on May 4, 1974 at the East-West-Festival in Nürnberg (Germany).

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