TZ 7353:John Zorn "Filmworks XVII: Notes On Marie Menken / Ray Bandar: A Life With Skulls"(2006)

 二つのサントラをほぼ交互に並べる変則的な構成で、独特の物語性をアルバムに施した。


 ジョン・ゾーンの映画音楽集、第17作目になる。たいがい映画音楽では作曲に専念するゾーンがサックスを2曲ながら吹くのも珍しければ、ピアノや親指ピアノでクレジットも希少価値だ。クレジットに寄ればこの2本の映画音楽双方を05年の9月7日、一日で録音したらしい。一本が前のめりなノリのラウンジ風、もう一本がミニマルな風景と、まったく異なるサウンドを一日で録音してしまう、ゾーンの手際よさにシビれる。

本盤で主要曲となる"Notes On Marie Menken"(2006)はMartina Kudlacekの監督作品で、テーマは20世紀初期の前衛映画監督、Marie Menkenについて。今回の監督は"Filmworks X: In the Mirror of Maya Deren"(2001)用の映画を監督した人だ。

 楽曲ごとに音像は大胆に異なる。共通するのはしたたかなグルーヴ。
 (1)はアコギの切なく力強いメロディを軸の、ラテン風味。(3)はエレキギターに持ち替えクレツマー風旋律を軽やかに奏でた。
 (4)はアルペジオの波打ちが美しい幻想的な曲。ギターの爪弾きを、ゾーンのウーリッツァが柔らかく広げる。鍵盤、良いフレーズだな。単音を重ねるあたり、スリルも漂わせた。
 (6)はフリージャズ。変則奏法は控えたゾーン得意のフリーなフレーズを、荒々しいドラムをバックに吹きまくる。(7)はアルペジオから変形したアコギのメロディへエレキを断片で足したか。奥行あるラウンジに仕上げた。ここでもシンバルが鳴る。しかし一転して静かに、でも存在感はたっぷり。

 (9)もラウンジの香りだがエレキギターの艶やかな音色を全面に出した。エレアコだろうか。ナイロン弦みたいな粒立ちのいい響きだ。(10)だと少々フリージャズ色が強まる。メカニカルでノービートのパーカッションは、ダビングもありかな。一人で一度に演奏とは思えぬ多彩な打音が聴こえる。
 (12)は再びゾーンのサックス。ディレイをどっぷりかけて山びこ効果のダブで、浮遊性を強調した。ラテンのしぶとい躍動を表現か。

 (14)はベースとギターの対話を渋いジャズで決めた。なお(14)や(10)でゾーンが演奏とクレジットされるbolexが、何だかわからない。映画カメラしか検索しても出てこない。カメラを回す音かな。カラカラいうパーカッションっぽい音色が、それか。
 
 もう一本はBeth Cataldo監督"Ray Bandar: A Life With Skulls"(2007)のドキュメンタリー用サントラからは5曲を収録。頭蓋骨コレクターRay Bandarを描いた作品らしい。
 そもそもは"Filmworks XIV"所収曲の使用許諾だったが、ゾーンが断って新作書き下ろしに至ったという、いかにもな成立経緯とライナーに記されている。



 素朴なンビーラの響きを、シロ・バティスタのタイトなパーカッションが飾り付けた。たどたどしくは無いンビーラのミニマル性をゾーンが丁寧に表現する。その他のパーカッションは強力そのもの。頭蓋骨から連想される、打音の軽やかなパーカッションをゾーンはしたらしい。 カリンバ、アンクルン、アゴゴにシェイカー。アフリカやアジアのさまざまなエキゾティックなビートが次々に響いてく。

 こちらのパートは全5曲15分程度。まとめたら、ごく短い作品だ。しかしアルバムへ散りばめて配置のおかげで、ピリッと締まる存在感とタイトな表情を本盤へもたらした。

Personnel:
Notes On Marie Menken:

Guitar - Jon Madof
Bass - Shanir Ezra Blumenkranz
Drums, Percussion - Kenny Wollesen
Wulizer Piano (4) ,as (6,11),bolex (10,14) - John Zorn

Ray Bandar: A Life With Skulls:

African thumb pianos - John Zorn
Percussion - Cyro Baptista
Percussion (5)- Kenny Wollesen

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