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NYUK 「NYUK」(2018)

 気心知れ手慣れてる、刺激的な即興が聴ける。

 是巨人+超即興。2013年10月21日に新宿ピットインで行われたセッション・ライブを、2018年になって吉田達也は自らのレーベル、磨崖仏からリリースした。
 ライブ音源だが拍手などはカットしており、現場感は希薄。ダビングはしていないようだが。
 全編即興で、10分弱の曲を8曲並べた。曲中を摘まんだり編集してる感じはせず。

 前述の吉田による2バンドを足した形だが、このメンバーによる演奏は、本セッションが初めてかな?
 とはいえ吉田を軸にせずとも、そうそうたるメンバーだから過去にそれぞれ共演経験はあるはず。
 タイトルのNYUKとは、ナスノミツル、吉田、内橋和久、鬼怒無月の頭文字を並べたかっこう。もちろんニューヨークと、ユナイテッド・キングダムの対比を連想も狙ってるだろう。音楽性的に両国のプログレ合体を意識してるのかもしれない。

 ともあれサウンドも、ドラムでなくベースが引っ張ってる風情が意外で面白かった。
 展開のお約束が無い即興だけに発散しそうなところを、ベースがしっかりまとめた。
 ミックスの関係もあるが、吉田は自分のドラムを前面に出さず、コントロールもしない。背後にちょこんと配置して、その代わり好き放題に叩いてる。
 ちなみにギターはどちらが誰だろう。左が鬼怒で右が内橋な気がした。

 そもそもこの4人は即興をやり続けてきた顔ぶれ。なおかつ我を出しまくるわけでもない。
 全体調和とバランスを常に意識し続ける雰囲気がぷんぷん伝わる。
 なにかのジャンルに縛られない。メロディにも瞬発的な音列も囚われない。
 ソロを弾きまくってもいけない。むやみに合わせない。かといっててんでに弾き倒さない。同じパターンを繰り返さない。時には自分がちょっと前に出てみる。たまにはリフっぽい響きを続けてみよう。音色だって変えなくちゃ。

 そんな相反する要素を互いの音を聴きながら、瞬時に判断して展開する。爆発フリージャズの破壊志向でなく、根本的なところで調和や構築を狙う趣味感が近しい。
 だから手慣れた風情がぶいぶい漂う一方で、刺激やお約束を外し続ける矛盾したサウンドが現れた。
 彼らが作り上げてくれるであろうと期待へ応えまくった、構築と混沌を自在に行き来するインプロを表出させた。

 この盤は、むしろ彼らの音楽を聴いたことない人のほうが楽しめる。
 なまじ彼らのファンであり、音楽を聴き続けてきたぼくの耳では、究極のところで意外性は無い。どんなにはじけても破綻しないって安心感があるから、根本のところで本盤をスリリングに聴けない。悲しい。

 でもインプロを聴きなれていながらも、彼らの音楽を聴いたことない人にこの音楽を聴かせたい。いないか、そんな人。でもきっと、堪能してくれると思う。

 疾走を基本としながら、時に音を抜いて弛緩した雰囲気も忘れない。彼らの持ち味を生かしつつ、もっと安易なお手盛りの即興に雪崩れない。
 そんなストイックにして挑戦的な音楽が詰まってる。一曲くらい、20分以上の長尺も聴いてみたかったな。
 
 
Track list
1.A 7:27
2.B 8:30
3.C 9:33
4.D 6:46
5.E 10:43
6.F 8:42
7.H 7:42
8.J 8:56

Personnel:
吉田達也:ds
ナスノミツル:b
鬼怒無月、内橋和久:g

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