TZ 7370:John Zorn "Filmworks XXI: Belle De Nature/ Rijksmuseum"(2008)

 聴きどころが一杯の映画音楽集。コンパクトな編成で味わい深く上品で美しい演奏を詰めた。
 ジョン・ゾーンの映画音楽集21作目は、二本の作品を収録した。前半7曲はアメリカのレズビアンSM作家、Maria Beatty監督"Belle Du Nature"(2009)用。ジャケット写真もその映画から取られてる。後半はオランダのOeke Hoogendijk監督によるドキュメンタリー映画のサントラになる。


 前半のMaria Beatty監督とは以前からの付き合い。"Filmworks IV: S/M + More"(1997)にも"Elegant Spanking"(1994)用の楽曲が収録された。基調はクロス・リズムに聴こえる。たとえば一拍抜いた16分音符のハープと三連アルペジオのギターとか。

 穏やかでロマンティック、静かな音像が続く。アコースティックとエレキを弾き分けるマーク・リボーの粘っこく確かな演奏へ、ハープの爪弾きが柔らかく載った。Shanir Ezra BlumenkranzはさまざまなTZADIK盤に参加してる人で、オスティナート気味に着実な低音を披露。破綻無く繊細な美しさが詰まった良い耳ざわりだ。ポルノの煽情性は無く、むしろ妖精の柔らかさを意識かも。
 (5)のすこやかなハープの独奏がひときわ美しい。その直後(6)で、ディストーション・ギターのファンクな泣きが存分に入る。相反する世界が、ごく自然に一つの盤で調和した。
 隅々まで気を配り、芯の太い煌びやかな世界が味わえる。素晴らしい。

 後半のOeke Hoogendijk監督の"Rijksmuseum"(2008)はアムステルダム国立美術館の改修を描いたドキュメンタリー。Wikiによればこの美術館は2008年夏の公開に向けて04年から大規模な改修中だった。その過程を描いた映画と思うが、実際は工事が10年も中断。再開館は2013年とある。いったいどんな風に映画はまとまったんだろう。

 音楽はもともとマサダ・ストリング・トリオの使用許諾依頼が切っ掛けだが、結局はゾーンの意向を通しオリジナル楽曲の提供に変わったそう。。
「費用はさほど変わらないし、クリエイティヴだ。ミュージシャンには新しいCDができ、映画二はオリジナルのサントラが着く。みんな満足だろう!」とゾーンはライナーで語ってる。

 クロス・リズムのグラス・パーカッションが鳴る(8)で幕を開け、バロックの厳かさがこのサウンドトラックで通底する。無闇な速いフレーズは避けるものの、端正でミニマルな要素をふりかけ、粒のそろった演奏は確かなテクニックがあってこそ。
 (10)の力強い木琴のマレットさばき、(11)でのザクザク迫るハープシコードなど見せ場が山のようだ。

 ジョン・ゾーンもハープシコードやグラス・パーカッションで数曲にクレジットあり興味深いが、実際は手が足りないところを補った程度。特に突飛な演奏をしてるわけじゃない。(15)での少々たどたどしく揺れるアルペジオで不安げなのが、ゾーンの演奏かな。だとしたら良い味わいを加えてる、ともいえる。

 ここにはハードコアで突飛な要素はまるでない。前衛の鋭さを滑らかなメロディに沈め、聴きやすくも奥深い世界を作り上げた極上の音楽がある。

Personnel:
On 1-7:
Carol Emanuel: Harp
Marc Ribot: Guitar
Shanir Ezra Blumenkranz: Bass

On 8-17:
Uri Caine: Harpsichord, Piano
Cyro Baptista: Percussion
Kenny Wollesen: Vibraphone, Chimes, Percussion
John Zorn: Harpsichord (12,15), Glass Percussion (8)

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