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Leon Russell 「Will O' The Wisp」(1975)

 才気ばしったサイケ風味による、R&Bの再解釈。

 レオン・ラッセルの6thソロは、思い切り五目味。一人多重演奏によるインストA1で幕を開け、A4やB1で日本へのエキゾティシズムやB1のトロピカルさへ興味を向けた。
 A5,A6,B1,B5はMGsのメンバーがリズム隊を組み立てる。だがレオンは彼らに頼り切らず、鍵盤を重ねて自己主張した。
 ドナルド・ダック・ダンがベースを弾いたのはA6とB1のみ。レオン自身がベースを弾く場面すらも。

 鼻にかかった甘酸っぱいメロディは健在、個々の楽曲も粒ぞろい。温かくてグルーヴィなポップスが並ぶ。
 スタックス勢に寄り掛かり、オーソドックスなR&Bで攻めることもできたろう。レオンが鍵盤足して、独自性も出せたろう。
 だが本盤のレオンはそんな類型的な世界に立ち止まらない。別のリズム隊でアルバム全体に幅を持たせ、前述のようにA4やB1で突飛な世界観も投入した。

 これはレオンの好奇心と創作力の炸裂のあかし。のびのびと嗄れ声でレオンは歌う。R&Bのスタイルに洗練さを持ち込んだ。しかし泥臭さを完全には抜かない。
 ぼくが大好きなレオンのアルバムは、失速の兆しとなった"Americana"(1978)だけれども。濃密さと旺盛な熱気で言うと、本盤の完成度は抜群だ。

 シングル・ヒットになったB5が本盤の魅力を象徴してる。MGsのアル・ジャクソンにドラム、ギターをスティーブ・クロッパーとボビー・マニュエルに任せ、ベースと鍵盤はレオン。
 しかしメンフィス・ソウルをストレートに演奏せず、どこかトロピカルな風情が曲全体に漂う。
 ジム・ホーンによるサックスはソウルっぽさを離れ、すこしロックンロールかつ、スムーズ・ジャズなノリ。昔なじみの風景っぽいが、異世界感が常に香った。いわば夢見心地のリゾートで奏でられる、寛いだポップス。

 分かりやすい保守的な風景に安住しない。冒険はするけれど、前衛の地平に向かわない。少し変わってて、へんてこすぎない。
 聴き手の心をくすぐりながら、放り出さぬ。あやすように不思議な風景で遊ばせる。そんなレオンの価値観を感じた。

 日本人の耳だとA4のひしゃげて崩したR&Bスタイルに違和感を覚え、いったん耳が立ち止まってしまう。
 けれどもそれを乗り越え本盤全体を味わった後に、レオンによる楽園のBGMなB5に到達した時、このアルバムの全体像を見渡せる。濃密で甘くふくよかなポップスが詰まってることを実感した。

Track list
A1 Will O' The Wisp (Instrumental) 0:55
A2 Little Hideaway 3:57
A3 Make You Feel Good 2:23
A4 Can't Get Over Losing You 5:04
A5 My Father's Shoes 4:16
A6 Stay Away From Sad Songs 4:01
B1 Back To The Island 5:20
B2 Down On Deep River 3:55
B3 Bluebird 3:55
B4 Laying Right Here In Heaven 2:52
B5 Lady Blue 3:28

Personnel:
Acoustic Guitar - Leon (B2, B3), Tommy Allsup (B2)
Alto Saxophone - Jim Horn (B5)
Backing Vocals - Mary McCreary (A2, A4, B1, B3)
Bass - Carl Radle (B4), Duck Dunn (A6, B1), Leon (A1 to A3, A5, B2, B3, B5)
Drums - Al Jackson (A5, A6, B1, B5), "Moon" Calhoun (A3, B2), Teddy Jack Eddy (A2, A3, B3)
Electric Guitar - Bobby Manuel (A6, B1, B5), Don Preston (2) (B4), J.J. Cale (A4), Leon (A3), Steve Cropper (A5, A6, B1, B5), Tommy Allsup (B2)
琵琶 – 平山万佐子 (A4)
尺八 – 村岡実 (A4)
Lead Vocals - Mary McCreary (B4)
Organ - Leon (A5, B1), Patrick Henderson (B4)
Piano, Synthesizer, Clavinet, Vibraphone - Leon
Programmed By [Synthesizer] - Roger Linn

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