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Mal Waldron 「Les Nuits De La Negritude - Reflections In Modern Jazz」(1963)

 さりげない熱狂を持って、切なくダンディに決めたピアノ・トリオ。

 マル・ウォルドロンの63~65年の録音はほとんど残っていない。ディスコグラフィーを見ても、唯一残されたのが本盤のみ。どうやらこの時期はヘロインの過剰摂取で、活動がままならなかったようだ。

 本盤はNYのインディ・レーベルPowertreeから発売とある。Discogsを見ても数枚しか同レーベルのタイトルは無い。
 どういう流れで本盤の録音と発表に至ったのだろう。

 本盤のサイドメンも、前後のマルの作品と関係は無い。たまたまのセッションなのか、当時のバンド・メンバーだったのか。関係性も不明だ。

 演奏も特筆するほど派手ではない。むしろ淡々と、マルは手なりに演奏している。しかし、だからこそ、マルの青白く抒情的な色合いが素直に感じられた。
 貴重な数少ない時期の録音という希少性ではなく、演奏の味わいにおいて本盤は愛おしい。

 本盤の音源は全10曲。B4"Quiet Temple"はのちに、"All Alone"と解題されてマルの代表曲の一つになった。それこそ"Left Alone"に通じる悲しみが滲む名曲だ。
 演奏がボロボロなわけではない。タッチは確かでくっきりしてる。呪術的なまでの左手や、突き進む右手の推進力が穏やかで、いくぶんあっさりと感じる。
 
 マルの独特な世界観を堪能するなら、他の盤が良いだろう。しかしあれこれと彼の盤を聴いて本盤に触れた時、なんとも涼やかな香りがする。
 それは明らかに、力不足と集中力の欠如による。演奏テクニック的にも、熱意でも、本盤がひときわ優れてるとは言いがたい。

 でも贔屓の贔屓倒しとして、本盤は愛おしい。マルの才気に圧倒されず親しみ深く近寄れるから。弱ったマルを慈しむ同情心ではない。いわばマグマの熱気が薄れ気味な隙に、ぐっと近づくようなもの。
 なんだろうね、ほんとうなら淡白だと切り捨てたくなるけれど。この盤は邪険に扱いたくない。

 権利関係がどうなっているのやら。Amazon Music Unlimitedではジャケットを変えて、ブラック・ライオン・レーベルのリマスターシリーズの一環として配信されている。発売元は1201 MUSICというブート臭いところ。

Track list
A1 Summerday 3:01
A2 Easy Going 2:08
A3 All Of My Life 3:08
A4 Ollie's Caravan 3:46
A5 Modal-Air 3:29
A6 Lullaby Chant 2:30
B1 The Call To Arms 5:45
B2 Skipper's Waltz 3:07
B3 Love-Span 3:27
B4 Quiet Temple 5:07

Personnel:
Piano, Composed By – Mal Waldron
Bass – George Tucker
Percussion – Al Dreares

Recorded at Stereo Sound Studios, N.Y.C., 1963

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