TZ 7343:John Zorn "Filmworks XIV: Hiding and Seeking"(2003)

 涼やかで切ない、コンパクトなアコースティック・アンサンブルのラウンジ音楽が楽しめる。付点音符で跳ねるベース。最初は表で、次に裏拍から始まり、表拍で区切りつけるメロディが浮かぶ。

 ジョン・ゾーンの映画音楽シリーズ14枚目。本作はOren Rudavsky監督のドキュメンタリー"Hiding and Seeking: Faith and Tolerance After the Holocaust"(2004)用に吹き込まれた。タイトルが示す通りユダヤ人の家族を追った作品らしい。

   


 さまざまに表情を変え、メロディが奏でられた。4曲で聴けるGanda Suthivarakomのスキャットも清らかに響く。これら4曲は歌ありと無し、双方が本盤に収録された。なお(8)などクレジット無いがスキャット入りな曲もあり。このへんの混乱は理由がよくわからない。
 本盤でのゾーンは自らの音楽的主張よりも、映画のコンセプトに寄り添ってあっさりと作品を仕上げた感がある。しかし奇妙な求心力を本盤のメロディに感じた。派手なコンセプトも仕掛けも、たぶんない。アドリブ要素も少なく、マーク・リボーのアコギを中心にメロディが鳴っていく。

 しかし旋律から滲む切なさが、なんだか心を軋ませる。甘さでなく、ほろ苦く。ひたひたと音楽は流れ、決して炸裂しない。時たま聴こえる女性ボーカルも必要以上に情感を込めない。けれどもアンサンブルから悲しい雰囲気が漂い、それに惹かれる。あっというまに耳に馴染み、どこか郷愁を誘う旋律のためか。

 ゾーンは"Necronomicon"を作曲後、すぐに本作へ取りかかった。作曲は数時間で録音は翌日、ミックスはさらにその翌日に完成とある。彼らしい手早い仕上がりだ。
なお"Necronomicon"はTZAIKの"Magick"(2004,TZ 8006)に収録されている。

 ちなみにGanda Suthivarakomはチボ・マットの羽鳥美保が組んだユニットSmokey & Mihoで、バックコーラスに参加した人らしい。("Smokey & Miho"(2002),"Tempo De Amor"(2002)でGandaとクレジットあり。大々的に本盤の帯へチボ・マット云々と書かれてるので、何かと思った。

Personnel:
Cyro Baptista: Percussion
Trevor Dunn: Bass
Marc Ribot: Guitar
Kenny Wollesen: Vibraphone
Ganda Suthivarakom (1, 3, 6, 10): vocals.

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