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Mary Halvorson Octet 「Away With You」(2016)

 おっとり複雑な空気感を意識したアンサンブル。

 メアリー・ハルヴォーソンがオクテット編成のリーダー作の初アルバム。コネチカット州のレーベル、Firehouse 12で吹きこまれた。録音やミックス、マスタリングはレーベル・オーナーのニック・ロイドが担当してる。
 
 バンドのメンバーは現在、さまざまに活動する人たちばかり。あと20年もしたら、ドリーム・チームになっていそうな顔ぶれだ。

 そうそうたるメンツを並べたが、テーマからソロ合戦や集団即興の趣きではない。もちろんアドリブ要素は多分に有るものの、かなり細かなところまでアレンジされた楽想だ。
 鍵盤奏者を起用しないのがポイント。単音の楽器を重ねて和音を作る。ペダル・スティール・ギターを加えてセンチメンタルなアクセント入れた点も、こだわりか。

 各曲には50番台の番号が振られている。メアリーが過去に書いた曲群の通しナンバーだろうか。

 ドラムはいるけれど、スイング感やグルーヴさは希薄だ。むしろほのぼのとたゆたうムードを大切にした。そもそもメアリーはダンサブルさを、さほど軸足を置いていないのかも。
 小難しい前衛アプローチは少ない。柔らかいメロディを細やかなオーケストレーションで包み込む。時にポリリズミック、しばしば浮遊する和音。
 一筋縄ではいかない楽曲が、心地よく並んだ。

 リズムやテンポのメリハリが少ない分、アルバム全体の流れやストーリー性は希薄だ。淡々と進んでいく。
 しかし各曲の完成度は高く、聴き重ねるほどにアレンジの妙味に惹かれる。
 アレンジにすべてを支配させず、テクニカルな奏者たちを生かした短いアドリブのつなぎ方も見事。

 そしてリーダーだけあって、メアリーのギターもアンサンブルで要をつないだ。ホーン隊が鳴っても、リズムの出し入れで区切りをつけても、ふと気づくとギターがそっと鳴っている。
 さりげなくも、密やかな存在感。それが本バンドにおけるギターの役割であり、アルバム全体から醸し出す楽想でもある。

 本盤の音楽は強く自己主張しない。だが確かな響きと構築性を持って漂う。
 このバンドはツアーもした。Youtubeにライブ動画もある。どうせならライブ音源も音盤化して欲しい。


Track list
1 Spirit Splitter (No. 54) 6:19
2 Away With You (No. 55) 8:07
3 The Absolute Almost (No. 52) 9:56
4 Sword Barrel (No. 58) 4:38
5 Old King Misfit (No. 57) 7:33
6 Fog Bank (No. 56) 5:30
7 Safety Orange (No. 59) 5:12
8 Inky Ribbons (No. 53) 8:38

Personnel:
Guitar - Mary Halvorson
Alto Saxophone - Jon Irabagon
Bass - John Hebert
Drums - Ches Smith
Pedal Steel Guitar - Susan Alcorn
Tenor Saxophone - Ingrid Laubrock
Trombone - Jacob Garchik
Trumpet - Jonathan Finlayson

Producer - David Breskin, Mary Halvorson, Nick Lloyd
Recorded By, Mixed By, Mastered By - Nick Lloyd
Recorded December 17th & 18th, 2015 at Firehouse 12

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