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Marvin Gaye 「The Soulful Moods of Marvin Gaye」(1961)

 憧れと現実のバラバラ具合が、演奏にも表れてるような。

 マーヴィン・ゲイはノーザン・ソウルのパワフルさで初期の人気を博すが、もともとはスタンダード・ジャズ歌手に憧れてたのは有名な話。本デビュー盤でも、スタンダードがずらり並ぶ。
 とはいえ後年のセクシーさとは裏腹に、ここで聴けるのは妙に堅苦しく線の細い甲高い歌手だ。
 
 ぼくはジャズ・ボーカルは詳しくないのでキチンと評価ができない。だけど本盤を聴いててピンとこないのも確か。ハイトーンを滑らかに響かせて、メロディをゆらゆらと揺らす歌い方にぎこちないとは思わない。21歳のマーヴィンが精いっぱい背伸びしてるとは思うけれど。61年当時ならば、さほど違和感ない方向性だったのかも。

 変だなと思うのは、演奏とのアンマッチさ。この時代だから同録だろう。にもかかわらず、演奏と歌が合わず、がたがたなところがいくつかある。
 予算が無く荒っぽい製作だったのかも。それにしたって、やり直しくらいしたっていいのに。
 弦や管があれば豪華に盛り上がるが、本盤はコンボ編成のみ。カネをかけずさっと作った。

 マーヴィンの歌声は、細身ながら後年のしなやかな表情は伺わせる。特にA1が良い。A3も。ふわりと喉を震わせ、メロディを操るさまは美しい。
 きちんと練り込んで作れば、もっとまともな出来になったはず。例えばA3のリズムと歌のノリがガタガタなところ、A5のぎこちなさ、B1やB3も性急さが曲と歌で合ってない。
 粗をあげつらっても仕方ないので、この辺にしよう。

 モータウンがジャズ系に不慣れだったとしても、ミュージシャン勢はそこまで不器用ではあるまい。ギターを筆頭に、それなりにジャズができている。
 ひとえに製作サイドがジャズ・ボーカルに冷淡で、荒っぽく作ったような気がしてならない。

 たしかにマーヴィンの本領はノーザン系のシャウトで映える。一年後の、次作"That Stubborn Kinda Fellow"(1963)でのスピーディさは、本盤と雲泥の差だ。
 マーヴィンの音楽的な転向は間違ってなかった。それでも、この盤の不細工な作りはもったいないな。丁寧に作ったら、もう少し魅力が増していただろう。

 スタンダードで固めた中で、デビュー・シングルでありベリー・ゴーディ Jr.が書いたB4と、そのB面であるB5の違和感が凄い。スマートな中にブルージーさを込めたB4は、本盤では異色だが、ゴーディらしいポップさを意識したR&Bのバラード。
 ムーングロウズのハーヴェイ・フークアと、のちにマーヴィンと結婚するアナ・ゴーディ(ベリー・ゴーディ Jr.の姉)の作曲なB5に至っては、モロなアップテンポのR&Bで本盤では違和感が凄い。
 B5をもっと跳ねて歌ったら、マーヴィンの売れっ子さはあと一年早かった。シャウトでの堂に入った迫力は既にある。

 とはいえマーヴィンは、この手の歌は下世話だと思ってたんだろうなあ。あくまで丁寧に歌ってるとこが、奇妙で面白い。
 次作でのしゃがれっぷりは、本盤だと全く無い。僅か一年で、どれだけマーヴィンは歌い方を変えたのか。

Track list
A1 Masquerade 5:12
A2 Funny Valentine 3:21
A3 Witchcraft 2:25
A4 Easy Living 3:04
A5 How Deep The Ocean 3:08
B1 Love For Sale 2:54
B2 Always 2:58
B3 How High The Moon 2:27
B4 Let Your Conscience Be Your Guide 3:04
B5 Never Let You Go 2:44
B6 You Don't Know What Love Is 2:52

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