TZ 8301:John Zorn "Rimbaud"(2012)

タイトルからズバリ、フランスの詩人アルチュール・ランボーに捧げた一枚。異なる編成の4曲をまとめた。現代音楽とジャズの文脈、双方のセッションが入っている。この分裂っぷりも含めてテーマか。トータル・アルバムではなく、オムニバスの趣き。

楽曲ごとに録音時期も11年12月から12年3月までバラバラだ。編成が異なるせいもあると思うが。
ジャケットが凝っており、そっと扱いたくなる丁寧な仕事。ランボーのスケッチ数葉や、アンリ・ファンタン=ラトゥールの絵を印刷したライナー入り。手触りのいい紙を使った太いデジパックはHeung-Heung Chinのアートワークだ。TZADIKのキュートなデザインを多数担当したNYのアーティスト。Heung-Heung ChinはChippyともクレジットされる。

(1)"Bateau Ivre"は7人編成の室内楽。混沌で不穏なゾーン流の楽曲で、旋律が次々現れては消え、別の楽器が覆いかぶさる。掴みづらく聴きやすくもないけれど、実はデタラメでは無く数値的な論理性ある可能性高いのがゾーンの作品の怖いところ。
適当に聴き流すと、ゾーンのコンセプトを全く理解できない。音だけでは掴みづらい難点もあるのだが。
今のところ、この楽曲の狙いをぼくは理解できていない。ハイトーンの木管がつぎつぎあらわれ、ピアノやビブラフォンが落ち着きなく暴れる。足元の不安さを煽るような緊迫さが全体を包む。和音は確かにあるが、進行性は感じにくい。特別な秩序が紡がれ、高い音程がきめ細かく空気を揺さぶった。
しかしなぜ、高い音程を多用するんだろう。2オクターブ下げたら、もっと耳へ馴染みそうなのに。

(2)"A Season In Hell"はイクエ・モリとゾーンの電子ノイズ・デュオ。ハーシュに向かわず、もよもよと実楽器のサンプリングを波形変調してるっぽい。
互いのノイズが定位を左右に振るため、どちらがどの音かは区別つかない。クレジットから推察するに低周波のリズミカルなノイズがモリで、細切れのサンプリング音がゾーンのようだ。
特に展開めいたものは無く、無意識の流れなまま即興的にノイズが揺れていった。リズミカルに触れたりと、場面ごとの変遷はありドローンではない。
サックスでは激しく暴れるゾーンだが、ここでは大人しくサンプリングを弄っている。激しく沸騰ではなく、ぐつぐつと煮えたぎる。そんなイメージ。
とはいえサンプリングの無秩序さは凄い。パターン化や単調性は欠片も無く、12分以上ものあいだ、混沌性を提示し続けた。よほどサンプリングを注意深く取り出している。

(3)"Illuminations"は流麗なピアノを軸のフリージャズ。ピアノのStephen GoslingはTZADIKで複数枚のセッションに参加してるミュージシャン。
クラシック畑の人らしく、譜面かインプロか判断に困る。譜面かなあ。とりあえず音楽はゾーン流の立ち止まらぬ変てこなメロディの連発。スイングやグルーヴは皆無で、欧州ジャズ風のクールさと現代音楽風の鋭利さを全面に出した。
トレバー・ダンとケニー・ウールセンの鉄壁リズム隊は、隙無くプッシュし続ける。音数少なくとも存在感ばっちりなダンのベースが、素晴らしくクールだ。小刻みなスティック・ワークのウールセンもかっこいい。

(4)"Conneries"は映画監督/俳優マチュー・アマルリックとゾーンのデュオ。ファイルカード式のセッションらしい。朗読を全面にだすとこは"New Traditions In East Asian Bar Bands"(1997)にも似てる。
サックスと同時にギターの音が聴こえるのが謎。双方、ゾーンが演奏のようなので。先にサックス以外を録音し、朗読とサックスをダビングかも。アマルリックの朗読はランボーの作品。どの作品からかは勉強不足でわからない。
朗読は破裂音を鋭く表現したスリル込みで、穏やかだがテンションを保ったまま進む。ドラムもギターもゾーンの演奏みたいだが、ランダムでフリーながら達者な演奏だ。
そして高速フレーズのサックスが、ときおり乗る。マルチ楽器奏者としてのゾーンはあまり前面に出ないため、本盤のテイクは貴重だ。

Personnel:
1)Bateau Ivre
Conductor – Brad Lubman
Ensemble – Talea Ensemble
Cello – Chris Gross
Clarinet – Rane Moore
Flute – Tara Helen O'Connor
Piano – Steve Beck
Vibraphone – Alex Lipowski
Viola – Elizabeth Weisser
Violin – Erik Carlson

2)A Season In Hell
Computer [Laptop], Electronics – Ikue Mori
Sampler [Samples], Electronics – John Zorn

3)Illuminations
Piano – Stephen Gosling
Bass – Trevor Dunn
Drums – Kenny Wollesen

4)Conneries
Alto Saxophone, Piano, Organ, Guitar, Drums, Effects [Foley Effects] – John Zorn
Voice – Mathieu Amalric(Text By – Arthur Rimbaud)


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