TZ 7387:John Zorn "Interzone"(2010)

米の小説家ウィリアム・バロウズへ捧げた盤。ジョン・ゾーンがゲーム・ピースや80年代の諸作で投入した場面展開を、21世紀のスタンスで改めて表現した。
激しい場面でも凄みある落ち着きと、メロディアスな部分はラウンジで寛ぐしたたかさあり。ゾーンの成熟っぷりも感じさせる一枚。長尺曲が3曲。豊潤で複雑な音構造が、すっごく刺激的で面白い傑作だ。

ジャケットも凝っており、デジパックのアートワークはNY在住の芸術家Raha Raissniaが担当した。鉄板風の銀色に箔押しなカバーケースつき。名刺大のカードが入っており、迷路の絵と"nova mob 07387"のコメント有り。コメントの意味は良くわからない。

イクエ・モリのサイン波で幕を開け、混沌だがタイトなアンサンブルがコラージュ気味に展開した。がっつりハードロックな突進から、混沌のリズム奔流へ。一転して穏やかなビブラフォンが鳴る。
脈絡なく次々に場面が展開し、ストーリー性を読ませない。このへんがバロウズの"カットアップ"手法へオマージュであり、ゾーンの発明した"ファイルカード・システム"に通底する。

過去の"ファイルカード"と大きく異なるのは、サウンドに余裕が聴こえるところ。手法に振り回されず、自己顕示に急がず、じっくりと音楽へ向き合った。
80年代の同種作品では、スピードと変遷の奇抜さを追求のあまり、過剰なめまぐるしさもあった。しかし本盤では一場面をもう少し長めにとり、場面毎をじっくり聴かせる。もっと聴きたい、と思った刹那に切り替えるかのよう。いわば過去がジェットコースターだとしたら、今回は迷路。馴染んだと思ったとたん、切り替わってしまう。
前者が若さのパワフルさとしたら、本盤では老獪さを感じる。

珍しくゾーン自身も演奏に加わった本盤は、馴染の巧者が揃った。MM&Wのジョン・メデスキが参加してる。パーカッション二人(モリも入れれば3人)とリズム強調のスタンスで、上物はマーク・リボーとゾーン。もっともあまりフロントが目立つ構図にはしない。
全体を通しては、リズムやシンセ、小物の重なりで産む混沌が軸に聴こえる。だからこそ、ときおり現れるメロディアスな場面が鮮烈に引き立つ。

2010年6~7月をかけて、ゾーンにしては珍しくじっくり録音した。デジタル録音の今、順録とも限らない。いわゆるテーマ旋律がキーになる曲でもなく、普通に聴いたら即興をつないだ風にも聴ける。ゾーンだから細かく作曲指示の可能性も高いが。

グロテスクでハードコアな場面ももちろんあるが、聴いてるうちに馴染んでくる。もっと深く聴きこんで、いずれは本稿を書き直そう。

Personnel:
John Zorn: Saxophone
Cyro Baptista: Percussion
Trevor Dunn: Basses
John Medeski: Keyboards
Ikue Mori: Electronics
Marc Ribot: Guitars, Banjo, Sintir, Cümbüs
Kenny Wollesen: Drums, Vibes, Chimes, Typani, Wollesonics, Percussion

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