TZ 8092:John Zorn "Music and Its Double"(2012)

現代音楽アプローチの3曲を収録した、ジョン・ゾーンが怒涛リリースだった2012年月刊シリーズの一枚。
とっつきは悪いが、聴くほどにゾーンの細やかな作曲っぷりにしびれる盤だ。



"À Rebours"、"Ceremonial Magic"、"La Machine De L'Être"の3曲を収録した。
"À Rebours"は作曲家のリゲティに、"La Machine De L'Être"は小説家のアルトーに影響を受けた作品だ。アルバムタイトルも、アルトーの演劇論「演劇とその分身(Le théâtre et son double)」がもじられてる。

"À Rebours"はチェロの独奏を中心に、三種類の室内楽アンサンブルが配置された。Vln/Vla/Vcの弦三重奏、harp,fl,clの木管寄り三重奏。そして打楽器の三重奏。
チェロがギシギシと軋み、弦や木管の森を駆け抜ける。ドラマティックで不安定なメロディの奔出を、チェロが舞うような、演劇的な作品だ。場面転換が素早く振り回されるが、個々の場面は精妙で美しい。一楽章構成のようだが、実際は大きな風景の変化が幾度もある。組曲っぽい仕上がりだ。最後の12小節はリゲティのチェロ協奏曲から引用らしい。

"Ceremonial Magic"は4楽章構成で、ドラムとバイオリンの二重奏。即興風に雪崩れる場面もあるが、すべてが譜面かな。
ゾーンの盤ではお馴染みの盟友、ケニー・ウールセンがドラムをつとめた。小刻みに叩き込むテクニカルなドラムは、特に繊細なハイハットさばきが聴きもの。バイオリンはメロディと軋み音の狭間を、着実なテクニックでものすごく滑らかに演奏してる。
魔術的な数値を作曲に織り込んでるっぽい。常に性急さを曲全体から溢れさせ、次々に旋律が料理されていく。

アリア集っぽい"La Machine De L'Être"は映像で演奏シーンも見られる。3楽章構成だ。ソプラノ歌唱は器楽的に声を震わせる。例えばパットンやEYEの歌唱を譜面にきっちり載せたような印象。即興風だが緻密なオーケストレーションを伺わせる。ここでも数値神秘学っぽいアプローチがありそうだ。
オケのほうは比較的聴きやすい響きだし、ソプラノはトリッキーな譜割なだけで特段ノイジーなわけでもない。雄大で繊細な楽曲構造をずぶずぶ楽しむのに適してそう。




Personnel:
"À Rebours"
Fred Sherry - cello
Jennifer Choi - violin
David Fulmer - viola
Mike Nicolas - cello
June Han - harp
Tara Helen O'Connor - flute
Josh Rubin - clarinet
Al Lipowski, Joe Pereira, William Winant - percussion
Brad Lubman - conductor

"Ceremonial Magic"
David Fulmer - violin
Kenny Wollesen - drums

"La Machine De L'Être"
Anu Komsi - soprano
Lahti Symphony Orchestra conducted by Sakari Oramo

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