TZ 5009:John Zorn "The Classic guide to strategy"(2004)

 NYのTonicで2003年9月に一ヶ月連続で行われた、ジョン・ゾーンの生誕50歳記念の連続ライブ。TZADIKからCDシリーズの第九弾な本盤は、9月8日の2stセット。ゾーンのキャリア初期に発表の"The Classic guide to strategy"だ。


 たぶん本来のコンセプトはマウスピースのみの鍵盤奏法。ずらりとマウスピースを並べ、それぞれの音程で旋律を作る工夫を施した。バード・コールなどでアクセントをつけ、時に水槽へ突っ込みブクブクと音を立てる。すなわち本来のサキソフォン本体を排除し、発音素材のマウスピースのみで即興がテーマだった。

 とはいえあまり厳密なものでない。たぶん(1)はずっと一本のアルト・サックスのみで演奏した。本来の音域でサックスを鳴らさない。オーバートーンやタンポとブレスなど、ノイズマシンとしてアルト・サックスを位置づけた。
 タンギングやフラジオ、軋み音まで。休むことなく次々とゾーンは複雑なテクニックを容易く披露する。高速タンギングの囀りは本当に凄まじい。
 (1)の終盤は循環呼吸で緩やかなフレーズをミニマルに繰り返す。凄みをみせてうねらせた。

 彼の超絶技巧をシンプルに堪能するには適した盤だ。音程が非常に微妙な場面が多く、西洋音楽の文脈ではメロディの流れが少々辛いけれど。
 純粋に音程の高低を意識しつつ、高度な跳躍や細部のピッチ揺れを楽しめたら、がぜん本盤の魅力が増す。

 (2)も楽曲のアプローチは変わらない。それぞれの技巧比率が違うくらいで、アルト・サックスから絞り出せるノイズを追求した。
 一転して(3)はスムーズなアルトの音域でメロディを吹き始めた。・・・なんだ、コンセプトと違うと思い始めたとたん、フラジオの嵐に流れる。その後もメロディと倍音の軋みが交錯する。どちらが聴きやすいかと問われたら、間違いなくメロディのほう。しかし本盤ではノイズが主ではないのか。このへん、本盤のコンセプトはあいまいだ。

 (4)は水の音。マウスピースの先を水槽に突っ込んでる。いや、ネックの先かな。細かいところは不明だ。若干の音程上下はあるが、ほぼノイズのみ。本来のコンセプトとして嬉しい展開だが、さすがにこれでアルバム一枚通されたら辛かったかもしれぬ。

 ここまで30分強。本来は終わりだったようだが、(5)をアンコールで演奏した。演奏前に「アルト・サクソフォン・マウスピース!」と自慢げに楽器紹介してるゾーンのギャグに、観客が受けている。この(5)でもミュートしたりオーバートーンさせたり。シンプルな響きを多種多様にゾーンは表現した。
 最後にサックスを低く鳴らし、多層音列を狙ったかのよう。最後の数音のほかは静かな表現だった。

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