TZ 5006:John Zorn "Hemophiliac"(2004)

 ジョン・ゾーン生誕50年記念の月間ライブ、冒頭を飾ったのがHemophiliac。2003年9月1日に2set公演あり、その1stセットを丸ごと本盤で収めた。50歳生誕シリーズの第6弾となる。


 わけわからぬゾーンの面目躍如なHemophiliacは、マイク・パットンとイクエ・モリとのトリオ。電子音がばら撒かれ、サックスが無秩序に鳴る。おもむろに変な声が載る音楽。何だかわからないメチャクチャだと思うだろう。たぶん想像通りの音楽が、ここで聴ける。


 "Hemophiliac"で音盤化は02年のアルバムのみ。2枚組で限定2500セットのみ発売された。今は売り切れ入手困難。ぼくも持ってない。一瞬、レア盤の価値に惹かれるが・・・本盤聴く限り、かなり抽象的なノイズが詰まって楽しめないかもと躊躇う。
 いずれにせよYoutubeでいくつかは聴ける。本稿末尾に貼っておこう。結論は、けっこう面白いノイズ作品だ。

 タイトル/バンド名の"Hemophiliac"とは血友病を指す。なぜこの単語を選んだかは不明だ。適当かもしれないし、HIVにひっかけ意味を込めてるのかも。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E5%8F%8B%E7%97%85

 観客はやたら盛り上がってる。後述の断片的なステージ映像から想像するに、パットンの派手な動きが面白いのかも。モリは淡々と音楽を提示し、ゾーンはたぶんいつも通り。
 音楽的には画一さの無いモリのノイズが前提。スペイシーな電子音楽の上で、アナログなサックスと声が暴れる。サックスはゾーンの超絶技巧であり、パットンはエフェクタも駆使した叫び声に留まらぬ響きを狙う。

 ゾーンはオーバートーン中心のノイズを狙い、ビートやグルーヴはさほど拘らない。混沌とスピードの狭間を駈ける。電子音の細部が若干滲み、細かな音の不明さが本盤の味であり、もどかしいところ。
 前半はビート性が希薄なうえ、パットンの役割が読み取りづらい。断続する絶叫がそれか。(3)の後半でひずみまくった声とサックスの高音が混ざり、インダストリアルな金属音が加速する。このくらい分かりやすいと、カタルシスを聴いてて感じた。

 いかんせん三人とも分かりやすさを全く志向しない。三人ともてんでに音を出さず、若干の構造は意識してそう。たとえば(4)はモリのソロめいた構造。中盤で全休符があり、何人かの観客が終わりと間違え歓声を一瞬送るシーンも聴ける。
 終盤でサックスが加わった。スペイシーに飛ばす電子音と溶けたサックスがきれいだった。パットンの叫びはエフェクタで潰しながらサンプラー風に出し入れらしく、人間の出す声に聴こえない。

 (5)の冒頭はリバーブとディレイ満載なパットン独唱から。教会風の厳かさがフリーに沈み、循環呼吸のサックスと混ざっていく。モリも白玉中心の音を流し、密やかにまとめた。
 楽曲としては本盤で、これが最も聴きやすい。

 歪むパットンの声を軸に三人が斬り合う(6)。ハイトーン連発のタンギングからメロディ、炸裂とゾーンのサックスは変幻自在だ。完全即興のはずだが三人そろって緩急効かせるうねりも聴きもの。

 本盤の最後は奇妙にコミカルな音像で終わる。
 このように良いとこ探しをしながら三人の音風景を想像すると、色々と楽しめる一枚。そこまでして楽しむ必要あるかは、人を選ぶと思う。冒頭は探り合いで炸裂、中盤からじわじわと呼吸が整っていく。だから最初は飛ばして中盤から聴き、改めて最初に戻ったほうが良いかも。本盤の

Personnel:
Ikue Mori: Drum Machines, Electronics
Mike Patton: Voice, Electronics
John Zorn: Saxophone, Voice

ノイズ・バンド風のステージ映像がある。これは02年、ある程度はライブも行ってたのか。


売切なスタジオ盤音源はYoutubeでいくつか聴ける。ハーシュノイズ風の出来の良いノイズ作品だ。



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