TZ5004:John Zorn "Electric Masada"(2004)

 ジョン・ゾーン60歳生誕記念、一ヶ月連続ライブのTZADIK CD化シリーズ第四弾は当時、待ちに待ったリリースなエレクトリック・マサダ。演奏は03年9月27日。E-Masada 3daysのうち、三日目の1stセットを収録した。

 E-Masadaはこの一ヶ月連続ライブでMasadaと並んで3days 6公演と、大規模な公演だった。他には2daysだったpainkillerとBar Kokhbaを除き、毎日演目は変わったのに。
 このライブ・シリーズ封入のスケジュール表でE-Masadaの存在を知るも、Youtubeなどない当時は音を確認のすべはない。だから変にじらされず本シリーズの第4弾でE-Masadaのリリースされたときは、素直に嬉しかった。

 惜しむらくはCD6枚分のライブを行いながら、発売はCD1枚のみ。「50歳ライブ・シリーズで二枚組は禁じ手か」と自分を慰めてた。もっともその後にBar Kokhbaは3枚組の発表に驚愕する。「ならばMasadaやE-Masadaも数枚組でいいじゃん」と歯噛みしたっけ。
 そもそもMasadaはPAすら通さぬ生演奏、がコンセプト。その逆ベクトルなプラグド・マサダのサウンドは非常に期待を持った。そういや当時は発売前に「E-Masadaは大編成だ」って、情報伝わってたかな。覚えてない。

 E-Masadaは8人編成。バロンとウールセンの2ドラム以外は全員が異なる楽器を操りアンサンブルに深みを出す。管はゾーンのみ。ギターと鍵盤奏者を入れて和音に注力、さらに打楽器でリズムも繊細さを施した。Ikue MoriのLaptopもリズム扱いと思う。とはいえ旋法が主軸なMasadaのこと、コード進行の妙味より旋律の展開が前に出る。
 だからMasadaのコンセプトの多くを否定した、いびつなユニットともいえる。

 恒例のMasada選曲の観点で構成を見てみよう。本盤収録7曲中、Masadaのスタジオ盤に未収録は"Kisofim","Lilin","Yatzar"の3曲だった。もっとも"Lilin"は"Live At Tonic 2001"(2001)で既にMasada版が発表ずみ。"Kisofim"や"Yatzar"も別のMasada関連ユニットで聴くことができ、本盤のみ収録のレアさは特にない。

 本盤収録7曲中、"Hadasha"と"Kisofim"以外はE-MasadaのTZADIK盤"At the Mountains of Madness"(2005)に収録。もっとバラエティ富んだ選曲も期待するが、いがいにレパートリーは絞られてる。これほどそうそうたる顔ぶれでも、おいそれと新曲投入は難しいのだろうか。

 タイトで素晴らしい演奏だが、アレンジのアイディアは正直、期待ほどの斬新が無し。やはり削ぎ落としたストイックなMasadaの潔さにかなわず、ラウンジ風味のチェンバー・プログレな気がした。
 聴き直しても、あまり印象は変わらない。2トップのメロディとフリーが自由に絡み合うMasadaに比べ、本盤は明確なソロ回し形態を取ったため分かりやすさが先に立つ。ゾーンもサックスをさほど軋ませず、おっとりと吹いた。

 ディストーション効いたギターを筆頭に、あらたな色合いでMasadaのレパートリーを表現、の意味あいでは面白いが。やはりゾーンが指揮に回り、ハンドキューでめまぐるしく奏者を変えるスタイルまで突き抜けないと、大編成コンボはきれいにまとまり過ぎてしまう。
 冷静に考えたら、それだけ超絶技巧の奏者が集まってる証明だ。本盤もライブ盤とは思えぬ完璧な演奏に唸る。破綻せず整いながら、自在にインプロを繰り出すメンバーの実力は、ほんとうに凄まじい。

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Cyro Baptista - percussion
Trevor Dunn - bass
Ikue Mori - laptop electronics
Marc Ribot - guitar
Jamie Saft - keyboards
Kenny Wollesen - drums
Joey Baron - drums

このライブ映像ではジョンがひっきりなしに指揮を繰り出し、しみじみカッコいい。


1993-08-19にNY Knitting FactoryでのE-Masadaだ。10年前で、既に存在したのか。
メンバーはJohn Zorn(as),Marc Ribot(g),加藤英樹(b),Ben Perowski(ds)。この時点は大編成でなく、Masadaをそのまま電化のコンセプト。今回のE-Masadaと根本が違う。


2013年8月4日のライブ。マーク・リボーが居ない他は、メンバーが変わらない。
やはり明確にジョンが指揮してるのがよくわかる。


本盤と録音時期が近い、03年7月18日にローマでのライブ。ただしもっと凶悪で、本盤での紳士的な風景と味わいがかなり違う。即興部分などでジョンの指揮はあるが、上で見られるのちの映像ほどひっきりなしではない。
なおメンバーは6人編成。イクエ・モリとジョーイ・バロンが居ない。
劣悪な音質で派手に聴こえるが、アレンジのアプローチは本盤のE-Masadaと別物な気がする。


そしてゾーンはメンバーをほぼそのままに、Masadaに縛られぬアンサンブルとしてDreamersを立ち上げる。ライブ映像だとゾーンのソロがどんどん激しくなり、コブラ的なコントロールっぷりなのも特徴だ。DreamersメンバーはE-Masadaからイクエ・モリが抜けただけ。2010年と2013年のDreamersライブ映像を貼っておく。
 


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