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Masada 「8:Het」(1997)

 しなやかで切なく流麗なアンサンブルが堪能できる一枚。

 ジョン・ゾーンによるユニット、マサダの第8弾は96年8月1日に録音。前作"Zayin"が同年4月16日録音であり、あまり間を置かず製作された。
 わずか数ヵ月後であり、前作から大きな飛躍や変化があるわけではない。ただし演奏の確かさは変わらない。
 冒頭に11分の長尺を置いた。たっぷり間を取り、アドリブ中に二管が絡み合うスリルよりも、互いのソロをじっくり聴かせるスタイルを取った。
 デイブ・ダグラスがソロの途中、数音を高らかに音程変えながら吹く場面は、まるで譜面のように端正であり、かっこいい。

 (4)(7)(9)と早めなテンポの曲も挟まるし、他の曲でも譜割や雰囲気で前のめりの場面はあるけれど。全体としては静かにゆったりと楽曲へ向かい合った印象を受けるアルバムだ。

 ゲストを招かず淡々と次々に楽曲を並べるマサダのスタイルであり、ゾーンがどの程度アルバムごとの特徴を狙っていたかは分からない。楽曲の構成など知識を深め、聴きこむほどに見えるものがあるのかもしれない。
 マサダはそれなりに聴いたし、本項を書くにあたり何度も聴き返したが、まだ僕はその域に達せていない。

 マサダの別ユニット"Bar Kokhba"(1996)のあとに、本盤が発売された。
 つまり「マサダの楽曲を別編成で演奏する」ってコンセプトのあと、マサダがどう変わったかを聴く格好になった。
 もっとも"Bar Kokhba"は94年から断続的に行われ、ライブ現場では"Bar Kokhba"もすでに披露済みだったのかもしれない。
 ともあれゾーンが温めていた、作曲を違う切り口で表現する、バンドでなくプロジェクト的な世界が本盤発売のあたりからどんどん拡大していく。

 ネイキッド・シティやペインキラーなどバンドをいくつもゾーンは稼働させてきたが、マサダはバンドでなく一大プロジェクトになった。そして奏者から楽曲や作曲家志向がゾーンの表現で濃くなり、「自分は吹かず、指揮する」の趣旨で疑似バンドの連発に繋がっていく。
 
 本演奏もソロのタイミングやブレイクの指示を、ゾーンはハンドキューしていたのかもしれない。コブラでプロンプターをするように。
 本盤に限らずマサダの盤で聴けるのは、切れ味鋭い転換と誰かのソロに係わらず絡んでいく奔放さだ。
 この盤あたりでは、あまり複雑もしくは多層さを追求せず、各奏者の持ち味やソロを強調するアプローチだったようだが。
 
 緩急を曲の中だけでなく、アルバム全体で作っている。名曲(11)ではリードミスっぽくサックスが鳴る場面もあるが、構わずに収録した。ゾーンは仕事が速くワンテイクで決めていくらしいが、本盤でも細部に拘り過ぎず、バンドとしてのダイナミズムを優先してる。

 涼やかで切ないメロディが連発し、アドリブでも緊張感をとぎらせず世界観を連結させる。本盤でも全10曲と多数並べながらも、一つの音絵巻を聴いてるように滑らかな並びだ。

Track list
1. Schechem (11:25)
2. Elilah (4:38)
3. Kodashim (4:40)
4. Halom (2:00)
5. Ne'eman (9:56)
6. Abed-Nego (7:14)
7. Tohorot (4:39)
8. Mochin (6:37)
9. Amarim (4:28)
10. Khebar (4:40)

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Dave Douglas - trumpet
Greg Cohen - bass
Joey Baron - drums

Recorded at August 1, 1996 at Avatar, NYC

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