TZ5002:John Zorn "Milford Graves John Zorn"(2004)

ジョン・ゾーン生誕50歳の03年9月連続ライブ@NY Tonicから、9月8日の1st setを収録した。1st setはNYの重鎮フリージャズ・ドラマーとの共演。グレイヴスはゾーンより10歳ほど年上になる。

全編インプロ。アルバムは1stセットを完全収録だが、トラックを7つに切ってくれた。CDとしては場面ごとに聴きやすいため、この配慮は有難い。


演奏はある意味、手慣れた感じ。楽曲のスリルはあるが、演奏そのものは安定してる。豊かなピッチでティンパニ風になるタムを叩きのめすグレイヴスへ、フリーキーなアルト・サックスでゾーンが立ち向かう。
なおこの日の2ndはゾーンのソロで"The Classic Guide to Strategy"。リードやバード・コールを駆使した吹奏キーボードの即興セットだ。本シリーズの9枚目で音盤化された。

ゾーンはひっきりなしにアルトのフラジオを響き渡らせた。世界でも指折りのフラジオ奏者であるゾーンのサックスは、どんなに激しく軋ませても鳥肌がピクリとも立たない。
これは明確な褒め言葉だ。複雑な運指で倍音を出すサックスのオーバートーンは、しばしば聴いてて鳥肌が立ってしまう。余計な倍音のためか。しかしゾーンのサックスは今まで聴いてて、そんなことが全く無い。
ぼくにとって貴重な三大オーバートーン奏者だ。ちなみにあと二人は梅津和時と菊地成孔。

本盤の演奏は主としてゾーンの展開にかかってる。グレイヴスはアフリカンな熱気を常に提示し続ける。ライブだと剛腕グルーヴにやられると思うが、CDではしだいに飽きてくる。肉体的な熱狂を自室で体験しづらいのと、ライブと違って集中力が続きづらいためだ。
そこへゾーンのサックスが加わり、楽想に幅広さを出す。時にクレツマーな旋律をばら撒き、時にノイジーな軋み音一辺倒で疾走した。この日のゾーンは調子が悪いのかメロディアスな(2)でしばしばリードミスめいたノイズを漏らしてるが。

(1)でフリー、(2)でメロディがゾーンのアプローチ。(3)で歌いだすのはゾーン?再びフリーキーなサックスとのバトルになる。
パワフルにサックスを喚かせるゾーンのテクニックは、やはり素晴らしい。ノイズマシンとしアルトを自在に操ってる。インプロバイザーとして完成されており、何が起こるか分からないスリルは希薄だが、めまぐるしく変わる場面展開と、ノイズとメロディが混在するバランス感は格別。

(4)でグレイヴスが語りながら叩きはじめ、しばしの独演へ。濃密に黒い世界が噴出する。刻みはランダムで、シンバルの無造作な叩きっぷりはバラフォンを聴いてるかのよう。やがてハイハットの踏みも加わり、ビートが多層化した。
たっぷり4分半がグレイヴスのソロ。唐突にゾーンが高らかなブロウで切り込み、その後は猛烈タンギングの嵐でアルト・サックスは囀りつづけた。重音奏法もお見事。
グレイヴスのリズムに乗りつつ、拍頭と裏を奔放に取りながら畳み掛けるスピードを力強く演出した。

(5)は冒頭からデュオ。ゾーンは変則呼吸法を中心の奏法を披露してる。朗々と響かせるメロディの美しいこと。(6)はグレイヴスの語りで、3分弱ある。ぼくのヒアリングでは残念ながら意味を聴き取れない。
そのまま歌い出し(7)に続く。ポンポン鳴るのはタンギングでのアルト・サックス。やがてドラムとサックスのフリーに雪崩れた。

妙な観客の歓声と妙に、遠いグレイヴスの声が聴こえる場面有り。グレイヴスはドラム・セットを離れ何かパフォーマンスしてるらしい。無伴奏で循環呼吸のサックスが鳴る中、グレイヴスが遠めのマイクで気合を入れた。やがてフロアタムのロールとグレイヴスの叫びは、観客が笑いながら大喜び。ゾーンはそっちのけでグレイヴスが盛り上がり、そのままフェイドアウト。なんとも締まらない終わり方だが、貴重な音源ゆえにご愛嬌、で済ましたい。

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Milford Graves - drums, percussion

これは10年後、2013年に60歳生誕イベントの一環で、ゾーンとグレイヴスが改めて共演時のライブ映像。


こちらは2012年9月14日、59歳の誕生月にLou ReedとBill Laswellも加えたカルテット編成にて。


音だけのブート。99年5月21日にカナダでのライブ。


06年12月31日、NY Tonicでの年越しセッション映像もあった。
メンバーはJohn Zorn, Milford Graves, Bill Laswell, Guy Licata, and Mick Barr。

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