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Masada 「7:Zayin」(1996)

 破綻しないスリル、と矛盾な表現が似合うマサダが聴ける。

 マサダ7作目のセッションは前作から約10ヵ月ぶり、96年4月16日に行われた。
 彼らのアルバムが個性をぱっと掴みづらいのは、全10作でただの一度もトリッキーな飛び道具を使わなかったところ。
 別の楽器、突飛な編成、変わったミックス、ゲストの投入、カバー曲の採用など。アルバムごとに売り文句を簡単につくれる手法を、ジョン・ゾーンは一切選択しなかった。

 ストイックにアンサンブルを絞り上げ、ありのままを小細工無しに魅せる。その愚直さと真摯さをマサダはとことん追求した。だからこそ長続きして、だからこそマンネリなほどブランド化したのだろう。
 マンネリ化と書いたが、けっして音楽そのものは縮小再生産ではない。メロディは印象が似ており、なかなか覚えられない。タイトルと結びつけて無理やり覚えようとぼくがしてないせいもあるけれど。

 聴いてると、メロディは体に入る。流して聴いてて、「ああ、あの曲」と聴きおぼえはある。でも曲名や収録アルバムが出てこない。根本的に後追いで、最初の8作くらいを同時に一遍に聴いたせいもある。
 "Piram"だけだ、ぼくが強烈に印象へ残ってるのは。あの掛け合いとキメがすごく好きだから。しかしそれ以外の曲も良い曲ばかり。駄作と思ったことは一度も無い。
 後年の疑似バンドも含め、ゾーンのコンボ編成な諸作は水準を落とさない。やすやすと平均を超える。
 その先鞭がマサダだ。これだけ多様なアプローチを、シンプルなカルテット編成で成し遂げたセンスは驚嘆する。

 それと、荒っぽい演奏が無いのも特徴。ライブでは疾走ゆえのパンキッシュに雪崩れた演奏を、ライブ盤やYoutubeでも確認できる。でもスタジオ盤だと、ぐしゃっと潰れない。優美さを保ってる。
 作品を残すっていう厳粛さを意識してゾーンは録音へ臨んでいたのだろうか。

 曲ごとの解説を避け、アルバムの特徴をかけないため、抽象的な感想が並んでしまった。

 本盤では前作からの、ごくわずかな進歩を聴き取れるかがポイントか。もともと前5枚目/6枚目を収録したセッションで、マサダの感性は研ぎ澄まされた。本作で大きな飛翔は無い。きらきら磨き上げられた玉が、きらきらきらになるくらい。
 フリーで鋭い演奏が頻出しながら、とても安心して聴ける。曲の確かさを実感できた。
 別編成での音源が多数ある(2)(3)を筆頭に、(8)(11)なども代表曲。小品(5)を挟む一方で、極端な長尺曲は無い。全11曲とマサダにしては多めの収録曲で、溢れ出る曲をソング・ブックのようにまとめた。

 アラブ風の叙情性の印象が強く、このあとあまり目立たなかったが、まさにバート・バカラック風の(5)"Bacharach"みたいなキュートさを見せたのも特徴か。この意味では、本盤でちょっとひねり入れたとも取れる。
 冒頭のメロディックなドラムの印象が強いせいで、ドラムも含めて4人による旋律を奏でてる感もあり。

 それにしても当時には、このBook 1が205曲、編成替えで多様化を加速したBook 2の316曲、さらに深化させたBoo3 3の92曲、併せて613曲に及ぶ大プロジェクトになるとは思いもしなかった。 


Track list
1 Shevet 7:58
2 Hath-Arob 3:24
3 Mahshav 6:16
4 Shamor 5:09
5 Bacharach 1:24
6 Otiot 3:27
7 Nevuah 8:22
8 Kedem 9:55
9 Zemer 2:14
10 Evel 5:35
11 Tekufah 6:59

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Dave Douglas - trumpet
Greg Cohen - bass
Joey Baron - drums

Recorded at the Power Station, New York City on April 16, 1996

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