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Masada 「6:Vav」(1995)

 研ぎ澄まされた個人プレーの妙味も大きく進んだ。

 マサダの第6弾は、第5弾と同時録音。95年7月16日と17日のセッションで製作された。本盤以降は一つのセッションを分売でなく、一アルバム一セッションの形態に移る。
 ジョン・ゾーンとしては手ごたえがあったのだろう。マサダのコンセプトを磨き上げは本盤で終わり、以降は折々の瞬間を切り取る風情に変わっていく。

 若干手探り感があった初回4作から、本5枚と6枚目のセッションは縦横無尽。
 トランペットとサックスが互いのソロでちょっかいを出し合い、二匹の大蛇が絡み合うようなスリルのアンサンブルががっちりと成立し、リズム隊も柔軟に裏方とソロを行き来する。
 シンプルなカルテット編成ながら、全員がフリーとオーソドックスな構築性を場面ごとに変化させる自由さを高めた。

 この6枚目が5枚目と、どのような違いを持たせたかは分からない。アップとスローのバランスを取りながら、アルバムを分けただけかもしれない。
 ただ、ぼくは本盤を聴いてて個々人のソロへ思い切り着目した気がする。

 アドリブを誰かが取る時、むやみに別のメンバーがちょっかいを出さない。無伴奏のソロや、リード楽器と伴奏の類型的な構図を取ってはいない。もちろん、併行アドリブなマサダならではの構図もそこかしこに溢れる。
 けれども、特にデイブ・ダグラスの堂々さが増したことを筆頭に、グレッグ・コーエンも緩急の勘所が、さらに鋭くなった気がする。

 ジョーイ・バロンは・・・まあ、そもそも彼はずっと奔放だ。慣れ親しんだゾーンの箱庭で、のびのびと遊んでいる。テンポをがっちりキープしながらも、大人しくリズムを刻みはしない。
 特にポリリズミックなアプローチや、変な拍で叩くこともしてないのに、彼のスティックさばきは凄まじく優美だ。

 そしてゾーンは、もともとコンセプトが確立している。危ういわけがない。

 本盤は極端に長い尺も、掌編もない。2~9分とそれなりの尺が9曲並んだ。
 アルバムとしてメリハリやストーリー性は無い。楽曲ごとにテンポの違いで起伏をつけて、あとはマサダ流のアラビックでセンチメンタルなメロディが続く。
 金太郎飴な耳ざわりながら、どの曲も明確に違う。アドリブのアプローチはパターン化を外した。
 
 ある時は掛け合い、あるときはフロントと伴奏、あるときは絡み合う。主役と脇役はアドリブのソロ役である程度は明確だ。しかしそのソロの背後で、別の楽器が刺激的な演奏をしている。実はこちらが主役ではと思わせるほどに。
 マサダは本当に息が合っており、聴きごたえがある。

Track list
1 Debir 8:02
2 Shebuah 8:09
3 Mikreh 3:57
4 Tiferet 4:05
5 Nevalah 2:10
6 Miktav 9:40
7 Nashon 8:37
8 Avelut 7:31
9 Beer Sheba 8:50

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Dave Douglas - trumpet
Greg Cohen - bass
Joey Baron - drums

Recorded at Power Station, NYC on July 16 & 17, 1995.

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