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森山威男 「Live at Lovely」(1990)

 森山が復活後の初音源な一方、極上の板橋ベスト曲集とも聴ける。

 山下洋輔トリオを75年に脱退して、77年に森山カルテットを結成した。メンバーは途中で変わりながらも活動しながら、85年に病に倒れ岐阜に移住。ほぼ演奏活動を停止していたという。本盤のライナーによると、年に数回程度、リーダー・セッションのライブは行っていたようだ。
 本格復活が4年後の89年。アルバムとしてはニュルンベルクでのライブ盤"Green River"(1984)以来、6年ぶりのリリースになった。

 森山カルテットは元々、ピアノレスの2管だった。森山カルテットのアルバムは何作もあるが、本盤のメンバーでは本作のみのようだ。
 固定したメンバーがおらず、アルバムごとに微妙に出入りしている。

 本盤は彼の拠点である岐阜のライブハウス、Jazz in Lovelyで90年12月28日と29日のライブ音源。ディスクユニオンのレーベルDIWから発売された。当時のCDらしく、硬く抑えめのマスタリングなため、がつんとボリュームを上げて聴きたい。

 選曲は全て板橋の作品、当時のステージで定番だったのかは知らない。ありがたいことに、板橋のリーダー・アルバムでありがちな、彼の即興や実験的な曲をやらず、メロディアスな作品が並んだ。
 結果的に板橋のリーダー作でも無いような、彼の楽曲集な面持ちなアルバムになった。

 メンバーはベテランが並ぶ。森山がリーダーゆえに、誰かが突出することが無い。フロントの井上淑彦(sax)、板橋が主にアドリブを取る。森山がドラム・ソロで無闇に見せ場を求めもしない。
 よって、バランスがとても良くて聴きやすいジャズが詰まった。

 猛烈に疾走する(1)から、メロウな名曲(2)で一息。再び(3)で熱く燃え、ダンディな(4)でミドル・テンポにキメたあと、ロマンティックな(5)で幕を下ろす。
 完璧な流れだ。
 (5)のみ5分程度とコンパクトにまとめたが、あとは10分以上の長尺ばかり。1セット4曲くらいのセットかな。
 (3)は20分以上の長尺で、たっぷりと盛り上がった。

 録音のバランスは過不足無く、ドラムの細部はもちろんベースもきっちり聴こえる。
 思うさまボリュームを上げて聴き、熱気を浴びたい。気心知れたメンバーなのだろう。遠慮会釈ない丁々発止で、おざなりの冷静さが無いから。

 こういうとき、全員のバランス感覚の見事さが浮き彫りになる。激しく鍵盤を叩きのめす板橋だが、リーダーではないことをきっちり意識している。一歩引いて控えず、ソロを中心にがんがん暴れる。
 けれど、自分のリーダー作ほど奔放にはならない。メリハリはわきまえ、緩急がばっちりだ。これがリーダー作だと物足りないが、サイドメンなら文句の無い仕事っぷり。もちろん「お仕事」の冷静さって意味ではない。

 森山のドラムも素晴らしい。手数多いパワフルさと、繊細なスティックさばきの両方を操る。どっしりしたリズムのセンスが、ものすごく良い。個性豊かなメンバーをがっちり支えて自らをアピールした。
 復帰作って気負いも感じられない。その日、その日のライブで確実に最高を目指す、淡々としかし集中した姿勢だ。

 実験や試行錯誤、挑戦とは少し違う。前と変わらず、なおかつ前をしっかり向く。活動停止中に衰えはしていない、と無造作に、高らかな宣言を本アルバムで見せつけた。



Track list
1.Sunrise 14:46
2.渡良瀬 12:06
3.Exchange 20:49
4.Hush-A-Bye 10:28
5.Goodbye 5:12

Personnel:
森山威男(ds)
井上淑彦(ts、ss)
板橋文夫(p)
望月英明(b)

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