TZ 7220:藤井郷子 "狐火 Kitsune-bi"(1999)

TZADIKで唯一となる、藤井郷子のリーダー作だ。中身はジム・ブラックとマーク・ドレッサーによるNYトリオへ、早坂紗知(ss)が3曲でゲスト。NYにて98年の5月7日と11月3日、二回に分けて録音された。
リリカルかつ切なさをそぎ落とした凛々しくも鋭い藤井の音楽を、リズム隊が乾いたグルーヴで迎え撃つ。

変拍子も混ざる小節線が希薄な硬質な展開は、のびのびと自由。フリージャズ風の色合いながら、常にかっちりとアレンジも感じさせる藤井の独特な世界観が味わえる。
てんでに楽器が鳴るようでいて、強固にまとまった。浮遊するフレーズが、カッチリアレンジにハマる瞬間のスリルが良い。

ピアノ・ソロの奔放性が、リズムと絡む妙味が本盤の魅力だ。ベースもドラムも遠慮せず、ピアノの譜割へ大胆に噛みつき振り回す。ほんのりと不安をあおるような、和音感も心地よい。
早坂も三人の個性に埋没せず、まっすぐにサックスを吹いた。(8)での波打つせめぎ合いがきれいだ。

藤井の音楽はとっつきこそハードル高いけれど、聴いてるとグイグイ惹かれてく。
抽象的なサウンドばかりではない。"Moonlight/sola"終盤での、めくるめく和音の展開はしみじみと美しく沁みる。

大量のリリースを誇る藤井だが自レーベルでの活動が中心なため、TZADIKからの盤は非常に少ない。TZADIKから他には、吉田達也とのデュオ"Erans"(2004)と、Carla Kihlstedtとのデュオ"Kuroi Kawa~Black River"(2009)があるのみ。他は"Irving Stone Memorial Concert"盤に参加しただけ。

収録曲は、藤井のオリジナル。1曲だけジミー・ジュフリーの"Moonlight"を取り上げ、自作曲につなげてる。ぼくは恥ずかしながら藤井の音楽に詳しく無く、本盤収録曲へのコメントは叶わず。
なお本盤で軸となるジムとマークのトリオは他に8枚のアルバムを、コンスタントにリリースしてきた。以下へまとめる。
本盤って本トリオで活動初期の音源にあたるのか。ちなみに早坂紗知は今も藤井郷子オーケストラ東京のメンバーとして、共演を重ねている。

[藤井郷子 NY Trio :Discography]
1997 "Looking Out Of The Window"
1999 "狐火 Kitsune-bi" (+早坂紗知)【本作】
2000 "Toward, 'TO WEST'"
2001 "Junction"
2002 "Bell The Cat!"
2004 "Illusion Suite"
2005 "Live in Japan" (+田村夏樹)
2006 "When We Were There"(+田村夏樹)
2008 "Trace A River"

Personnel:
藤井郷子: Piano
Jim Black: Drums
Mark Dresser: Bass
早坂紗知: Soprano Sax

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