TZ 7307:John Zorn "Filmworks V"(1995)

大木裕之:監督"エクスタシーの涙/恥淫"(1995)のサントラ。ゲイ・ポルノ映画のくくりらしいが、実際はアート色の強い作品のようだ。
セッションではなく一分間のスケッチ集な趣き。95年10月1日NYにて、たった一日で録音された。

フィルモグラフィーによると大木の比較的、活動初期にあたる作品である。この映画は2012年にも再上映された。日本語のレビューがこちら、英語のレビューがこちら

映画は60分を一分1カットに分割した実験的なアプローチで、音楽も一分刻みの縛りあり。親しい日本人の友人から一週間の短納期を頼まれて快諾、録音を済ませたとジョンはライナーで書き記す。
即興要素を踏まえつつ、楽曲ごとにジャンルやアプローチをガラリ変えた。バラエティというより分裂的な楽曲が並ぶ。本盤には48曲を収録。ただし1曲、2分の曲があり。
「一曲一分」の最低限なルールすらも、軽く破って見せるあたりがジョンらしい。

ライナーでジョンが言うには「自分で音楽リリース権を確保できれば、ギャラにはこだわらない。監督が望むよりむしろ、望まぬ音楽をつけたい」と、都合のよいポリシーを提示してる。だからこそ予算の無い映画に、ジョンのスタイルは歓迎された。

本盤の音楽はアジア風、仏教を意識した風景がたびたび登場する。メロディの統一性は無いが、アプローチ思想に通底を施した。
ポルノ映画の煽情性とは逆ベクトルだ。これを聴いても劣情より、アートの崇高もしくは孤高さが先に立つ。その意味で本作は正しい定義のサウンドトラックでは無く、ジョンの音楽を貸与でフィルムに併せた、のほうが近い。

声は多分、全てサンプリング。そこへシロ・バティスタが軽くビートを載せ、ギターが味をつける。ジョンはサックスを、ほとんどの曲で吹いてない。あくまでディレクター役。
例えば(20)で「もっとこのセッションを聴きたい」と思う盤ではない。一分間でいかに風景を変え、バラエティに富ますか。無機質なサウンドが続く、ジョンの作曲力をオムニバス形式で味わうべき盤。
つまりは小節ごとに音像が変わる、ジョン独特のファイルカード式作曲の拡大版とも聴ける。

ノイズ寄りの楽曲もある。(24)でクレツマーと歌謡曲が混在する旋律もある。ラウンジっぽい滑らかさもあれば、がっつりハードなギターや、アルト・サックスが唸る曲も。
ジョンのプリペアード・ピアノは(28)や(42)で聴ける。
ショーケース、とまでは言わないが「ジョンの多彩な興味を示したカタログもどき」とも本盤を位置付けられそうだ。
正直なとこ取り留めない盤なため、初心者には薦めづらい。

Personnel:
John Zorn: Alto Saxophone, Prepared Piano, Samples
Cyro Baptista: Percussion
Robert Quine: Guitar
Marc Ribot: Guitar

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