TZ 8095 John Zorn "Lemma"(2013)

特にバイオリンへ焦点あてた、3曲の現代楽曲集。ジョン・ゾーンらしい超絶技巧を必要とする作品ばかり。
キイキイとバイオリンがアルバム全編で軋み続ける。繰り返し聴いてると、じわじわっと歌心や複雑な作曲の妙味が耳にしみこむ・・・ような気がする。

調べてる途中で"Zorn's lemma"って言葉にたどり着いた。当然、ゾーンはこの言葉を意識した本盤のタイトルづけだろう。
"Zorn's lemma"とは数学の集合論における、20世紀中期の定理。詳しいことはよくわからないので、こちらを参照ください。
"Zorn's lemma"は「ツォルンの補題」と訳される。だからジョン・ゾーンがらみの英文記事を自動翻訳かけたら、"ツォルン"って変換されるのか。

(1)~(12)は"Apophthegms(格言集)"。各6楽章の二部構成で、12年12月に録音のバイオリン2挺で演奏される。猛然と高音フレーズが軋み、緩やかな旋律もすぐさま複雑怪奇なメロディへ変化した。
元は本曲を演奏のデヴィッド・フルマーと、本盤(13)を演奏するポーレン・キム、二人のアンコール用に小品を作曲がきっかけ、とライナーにある。アイディアが膨らみ今の形になったとあるが。緊張感が全編に漂い、アンコールで演奏されても寛げ無さそう。

(13)は"Passagen"。ドイツ語で"通路"の意味か。前曲の続きかとシームレスに聴いてしまった。そのくらい前曲は注意して聴かないと終止感が希薄だ。ライナーには"B-A-C-H"の音程モチーフを元に作曲とあるが、高速で無機質な肌触りからは、どう変奏してるかパッとわからない。

米の現代音楽の作曲家エリオット・カーターに捧げるべく、彼の103歳誕生日の11年12月11日に向けて作曲。同年12月9日に初演された。ちなみにカーターは翌年11月に大往生を遂げる。同年8月の作曲が遺作となる元気な人だ。

ノイジーな特殊奏法はわずかで、ときおり聴こえる軋み音くらい。基本は旋律だが、譜面を細かく見ないと分からないかも。たぶん、ゾーンらしい緻密な構成だと思う。
ハイトーンがしばしば飛び出して、ちょっと耳にきついのが玉に傷。バイオリンの音色は、ふくよかさより金属質に寄っている。なお演奏は全く危なげない。メカニカルに飛び交う複雑な楽曲を、たやすく(?)奏でた。

(14)~(17)が"Ceremonial Music"、4楽章構成だ。
この曲はデヴィッド・フルマーとの出会いがきっかけで作曲とライナーにある。http://fulmermusic.com/ ステージでは、デヴィッド自身が12年7月3日に初演した。本曲は遡ること同年3月にデヴィッドの録音。ある意味こっちが、世界初演。録音物だけど。

トラックは一つだが4楽章に分かれた。ここではバイオリン独奏だが、元はパーカッションとのデュオ作品。デュオ演奏はデヴィッド自身の演奏で、"Music and Its Double"(2012)のTZADIK盤が出てる。
しかし本当に、一人で弾いてるの?複数の音が出る場面が、あまりにも多い。たっぷりとエコーを含んだ録音なこの曲、ダビングとテープ編集の嵐でも別に驚かない。

なお本ライナーには他にも、ゾーンが誰との出会いがきっかけで作曲したか、数曲の記載あり。資料になりそうなので、曲名と、影響された人の名を記しておく。
"Sorilege" Michael Lowenstern ("Magick"TZ 8006、2004年収録)
"The Prophetic Mysteries of Angels, Witches, and Demons" http://www.chambermusicsociety.org/artists/artist/tara_helen_oconnor" target="_blank" title="Tara Helen O'Connor">Tara Helen O'Connor (2007、未音源化?:関連記事その1その2
"The Steppenwolf" Joel Rubin (2012?:関連記事その1その2
"The Tempest" Claire Chase ("On The Torment Of Saints, The Casting Of Spells And The Evocation Of Spirits"TZ 9003、2013年収録)
"Jumalatteret" Anu Komsi http://jp.medici.tv/#!/anu-komsi(未音源化?;関連記事

Personnel:
Chris Otto - Vln (tracks 1–12),
Pauline Kim - Vln (track 13)
David Fulmer - Vln (tracks 1–12 & 14–17)

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