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井上陽水 「9.5カラット」(1984)

 大ヒットした。聴きごたえある、初のセルフ・カバー集。

 当時のレコード屋でさんざん面出しの販売だった記憶あり。77年の曲A1から、おおよそ時系列に並んだ。といっても82~83年に提供した曲が並ぶけれど。
 B1が書き下ろしのオリジナル・シングル。

 当時までに他人へ提供した曲はもちろん他にもある。例えば沢田研二"MIS CAST"(1982)は全曲が陽水の作詞作曲だ。
 提供曲からえりすぐった、つまりベスト盤的な位置づけもあり。

 ちなみにこの"MIS CAST"から陽水は、"LION & PELICAN"で"背中まで45分","チャイニーズフード"を、本盤で"A.B.C.D."を取り上げた。
 
 陽水の歌唱力ならば、メロディが弱くともある程度まで聴かせる楽曲が仕上がる。しかし提供曲は相手の歌唱力に頼らざるをえないため、必然的にカバー曲のほうがきれいなメロディが並ぶ。
 A2やB2が特に思い出深い。

 陽水のバックバンドを務めてた、安全地帯との代表曲なB4は陽水が作詞のみ。作曲は玉置浩二だったと、クレジットを見て初めて知った。
 同じようにA5も玉置の作曲。

 アレンジは馴染みの星勝が復活。A1,3,4、B1,3を担当した。そのほかは久石譲がA2,B2、残るA5とB4は萩田光雄が編曲した。
 曲調の方向性はまちまち。でもあまり歌謡曲っぽさに雪崩れないよう、当時の現代的な色合いを意識して作ったようだ。
 ピアノとシンセ・ストリングスをバックのB3はさすがにメロウさが強いけれど。
 
 陽水の歌声は余裕たっぷり。A2でのラララって口ずさむだけで、十分に聴かせる。
 提供された中森明菜のイメージがこびりついていたB2も、陽水の歌声で世界観が出来上がった。
 つまり女性向けの歌すらも自分の世界に取り込む、鋼のロマンティシズムが嫌味なく成立した。
 そもそもB2以外にA2,A3,B3も女性へ提供曲。歌詞が自作でないせいもあるとはいえ、陽水はある意味、性別を超えた説得力を歌声に込められることを本盤で見せつけた。


Track list
A1 はーばーらいと
A2 ダンスはうまく踊れない
A3 Transit
A4 A.B.C.D.
A5 恋の予感
B1 いっそ セレナーデ
B2 飾りじゃないのよ 涙は
B3 からたちの花
B4 ワインレッドの心

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