井上陽水 「EVERY NIGHT」(1980)
冒頭から陽水節が炸裂する歌い回しだ。アレンジは星勝が初めて抜け、井上鑑(1,4,5,6,7,10)、鈴木茂(2,3,8,9)が担当した。
よりAOR的な洒落た路線変更を図る試みか。演歌とも歌謡曲とも違う、気どった飾りっ気を漂わせる。非日常性をスタイリッシュに表現とでも言おうか。
ディナーショーめいた大人っぽさを狙った感あり。さらにタルッと寛いだリゾート風味がそこかしこに漂わせた。
アルバム先行シングルで80年7月に"BRIGHT EYES"(アート・ガーファンクルの日本語カバー)があったがA面は本盤へ未収録。B面の(7)のみ収録された。
続く80年11月に(2)(10)はシングル両面を本盤へ収録。(2)は同年10月に発表した山口百恵"This is my trial"へ陽水が提供した曲を、たちまちセルフ・カバーしたかっこう。
そして本盤が80年12月のリリース。矢継ぎ早に発売されてたんだな。
言葉遣いもてらいなく、音の響きやイマジネーションの趣くまま歌い並べる。"White"の頃から前兆はあったが、本作で顕著が英語と日本語を無造作に使った。
ハイトーンを深いエコーで包み、優美な世界を演出した。
汗臭さや親しみを敢えてハズし、高みから見下ろす世界観だ。
井上のアレンジで洗練さを追求し、鈴木のほうは泣きのギターで情感を滲ませるバランス感覚か。双方ともアレンジャーとして手慣れたシティ・ポップス風味を奔出する。
そこへ陽水の情緒が滲むメロディと、揺らぐ歌声が載って異化効果を出す。
ポップスとして良く練られた前作"スニーカーダンサー"から、さらに飾りっ気を強調したアルバム。スタジオ・ミュージシャンと思しきタイトな演奏で、するすると流れるきれいなポップ路線が出来上がった。
陽水の歌声、歌詞が無ければおよそ耳に引っかからないほど、きれいきれいな出来だ。そもそも歌声やノリからして、リズミックなグルーヴ志向とは異なる、滑らかさをもっているため。
Track list
1.サナカンダ
2.クレイジーラブ
3.世間人でGO―
4.Winter Wind
5.8月の休暇
6.EVERY NIGHT
7.答はUNDERSTAND
8.I yai yai
9.プールに泳ぐサーモン
10.空はブルーエンジェル
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