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井上陽水 「氷の世界」(1973)

 ロックとフォークの折衷盤。曲によって方向性が極端に違う。

 ライブ盤を挟んだ3rdアルバム。いきなりロックに風景を変化させた。旋律に日本的な抒情性がありつつも、アレンジの形式だけはバタ臭さがあり。奏者によって音楽がいかに変わるか、を実感する。

 冒頭曲で米西海岸ロック風の開放感をまとい、一気に方向転換した。
 実際の録音は東京とロンドン。曲によって録りわけた。
 冒頭の曲では米西海岸っぽく聴こえたが、(4)でストリングスが入るとおっとりした英国っぽさも感じる。
 コーラスでクレジットされたArrivalは、当時にロンドンで活動しLPを残したコーラス・バンド。
 他にはクォーターマスからジョン・ガスタフソン(b)、ピーター・ロビンソン(p)。数年後にイアン・ギランのバンドで共演するガスタフソンと共演するレイ・フェンウィック(g)らが参加した。

 アレンジは変わらず星勝だが、奏者はもっと洋楽ナイズされたメンバーへガラリ入れ替わった。
 日本人ミュージシャンも細野晴臣や林立夫とティン・パン人脈が加わった。ポンタもA2,B3の2曲で叩いてる。前作から続けて高中正義も参加。ギターだけでなくA7, B4でベースを弾いてるのが興味深い。

 それでも完全にロック志向に行かずA6やA7,B1みたいに叙情性フォークをどっぷり挟んでしまうところに時代を感じる。
 陽水の志向ももちろんあったろうが、完全にロックへ振り切って観客を置いてきぼりにするのを避けたんじゃないかな。
 ずぶずぶフォークなB1のベースを細野がモダンなベースで受け止めてるとこが何ともビジネスっぽくて皮肉だ。

 そしてもちろん、この盤ではA3とB2で忌野清志郎の作曲参加も忘れてはいけない。とはいえ陽水の色が強くがっつり塗り潰されてしまい、痕跡くらいしか清志郎節は残っていないけれど。

 なお陽水の歌い方はむしろシンプルになった。独特の節回しはもちろんある一方で、あまり発声を崩さず素直に喉を震わせている。

 クールな陽水の世界観が炸裂した前作に比べ、本作ではロック色が強まったのと裏腹に、抒情フォークさが復活した。演奏のタイトさでジメジメさはかなり軽減されているけれど。

Track list
A1 あかずの踏切り 3:12
A2 はじまり
A3 帰れない二人 4:18
A4 チエちゃん 2:42
A5 氷の世界 4:09
A6 白い一日 2:25
A7 自己嫌悪 2:37
B1 心もよう 3:23
B2 待ちぼうけ 2:40
B3 桜三月散歩道 3:02
B4 Fun 2:39
B5 小春おばさん 3:04
B6 おやすみ 2:51

Personnel:
Vocals - 井上陽水

Arranged By - 星勝
Arranged By [Strings, Brass] - Nick Harrison (A4, A5, B4)

Acoustic Guitar - 安田裕美 (A2, A3, A6 to B4), Mark Warner (B6), Ray Fenwick (A4, B5), 井上陽水 (A2, A3, A6 to B4)
Blues Harp - Judd Mcniven (B5), 井上陽水 (A5, A7)
Chorus - Arrival (2) (A5, B5), 星勝 (A1)
Drums - Barry De Souga (A1, A4, A5, B5, B6), 見砂和照 (A7, B4), 村上修一 (A2, B3), 林 立夫 (A3, B1, B2)
Electric Bass - 細野晴臣 (A3, B1, B2), John Gustagson (A1, A4, A5, B5, B6), 高中正義 (A7, B4), 山村隆夫 (A2, B3)
Electric Guitar - Joe Gammer (A1, B6), Mark Warner (A4, A5, B5), 高中正義 (A2, A3)
Mandolin [Flat] - 安田裕美 (A7)
Piano - Anne Odll (A4, B5), 深町純 (A2, B3), 松岡直也 (A7, B4), Peter Robinson (A1, A5, B6)
Steel Guitar - 大江俊幸
Synthesizer, Mellotron, Harpsichord [Electric] - 深町純 (A3, B1), Peter Robinson (A5)
Violin - 谷岡としお
Producer - 多賀英典

Recorded at the Mori Studio, Tokyo / Trident and Advision Studios London, June -September 1973

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