TZ 7319:John Zorn/佐藤通弘 "Ganryu Island"(1984)

日本趣味の究極、三味線とのバトル。武蔵と小次郎、ジョン・ゾーンはどちらに肩入れし吹いたのかな。巌流島を本盤のタイトルに掲げたジョンは、ここでサックスよりマウスピースを多用した。ならばやはり武蔵か。

共演の三味線はその後も即興シーンと関わる佐藤通弘なだけに、極上のインプロとして聴ける。マウスピースのみを吹くジョンのスタイルは"The Classic Guide to Strategy"(1983)に通じる。もっともこの"巌流島"そのものがジョンのキャリア初期な録音作にあたる。だからジョンの本スタイルが二刀流を模したとまで想像は、うがちすぎか。

本盤はまずLPでYukonより84年にリリース。のち98年にTAZDIKからボートラを4曲追加し再発された。

三味線のリズミックさへ無造作なマウスピース奏法がかぶる。無秩序なインプロともむろん聴けるが、日本人ならば自文化への琴線や異物感も併せて評価したい。
耳馴染みの音色と鳥の囀るようなジョンのノイズは、単なるフリーを超えたソウル・アンビエントと味わえる。古めかしく若者文化と逆行する三味線の響きと、仮想の田舎風景を脳裏へ浮かべ、さらにNYの先鋭ジャズと混淆したハズしっぷりを、面白く楽しもう。

ジョンがほぼ旋律を放棄したため、アドリブ交換の妙味は薄い。さらに三味線もあえてギター的なアプローチを避け、オーソドックスな奏法を選ぶ。
従って三味線が比較的前に出て、日本的な分散和音をベースにしたリズミックな音像がほとんどだ。
たとえば"はぐれ雲"でピッチやテンポを佐藤が大きくズラし、スリリングな場面も演出するが。

本盤は10分越えの3曲"はぐれ雲"、"影武者"、"巌流島"を中央に置き、他は5分程度の曲が並ぶ。瞬間的な斬り合いと、じっくり鍔迫り合い、双方を味わえた。
ぱっと聴くと佐藤の即興演奏へジョンが絡むかたち。しかし繰り返すうちに次第と、ジョンとのインタープレイをそこかしこに感じる。インプロとは思うが、息の合ったアンサンブルだ。

たぶんジョンはフリージャズの文脈で、リズムやテンポ、拍や構造を外そうとしてる。しかし日本人の耳では無造作なノイズや非合理にも、奇妙な不規則の調和を感じてしまう。すなわち、意外とポップに聴こえるはずだ。

なお佐藤は本盤録音の4年後、改めてNYへ渡り、ジョン・ゾーンのプロデュースでE#やクリスチャン・マークレイら、NYアヴァンギャルドのそうそうたる顔ぶれと共演した1stソロ"Rodan"を(1988)録音。スイスのレーベルhat ARTから発表する。


Personnel:
JOHN ZORN:Alto And Soprano Saxophones, Bb Clarinet, Game Calls, E-flat Clarinet
佐藤通弘:三味線

関連記事

コメント

非公開コメント