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Momus 「Otto Spooky」(2005)

 気怠くチープな実験性が奇妙なポップス感を産む、独特の世界観が炸裂した。

 このころの作品を聴くたび、初期の耽美なポップス騎士との落差にしみじみする。本質的にモーマスは変わっていない。開放的な曲は敢えて選ばず、皮肉っぽく退廃と無気力さを音楽に滲ませる。
 もし生楽器の弾き語りならば内省的な世界が産まれたろう。しかしチープなシンセを中心にさっくり作った音像を選ぶものだから、やっつけ感といい加減さをパッと感じてしまう。

 実際は安直や適当に作ってはいないようだ。曲によってアレンジやアプローチは変えており、単調さは回避している。
 あまり音数を足さず、シンプルな構造なのは確かながら。

 録音はベルリンだが、じわじわとモーマスが日本移住の兆しが見えてきた。次作"Ocky Milk"(2006)ではベルリンと大阪の双方で録音されている。
 志村けんにインスパイアされた(日本人にとっては)怪曲"Corkscrew King"を収録も本作。

 本盤には異文化圏から見て自国を解釈される居心地悪さがそこかしこに。そもそも"Corkscrew King"からしてそう。ダルさを保ったサウンドで「変なおじさん」って日本語フレーズが唐突に歌詞へ現れてくると、何だと思う。

 他の曲でもアジアンな要素が重ねられた場面あり。妙に調子っぱずれな感じも含めて、日本と言うより東南アジアっぽく聴こえる場合もあるけれど。
 これもモーマスにとっては日本風なのだろうし、逆に東南アジアの文化圏から見たらぼくの解釈も噴飯物なのだろう。

 ギターを使う場面もあるが、基本的には鍵盤を中心のアレンジ。リズム楽器は目立たない。
 05年のPC環境はイメージわかないが、早回しやテープ操作っぽい音像がそこかしこに現れている。演奏をいったんサンプリングして、ポスト・プロダクションで弄り倒した。
 生演奏っぽさよりも、回転数を変えたり変調させてつかみどころ無いオケをつくり、歌を載せたような音像。
 時に歌を載せず、テープ操作のみで一曲を作った。

 ときにテンポがまずまず速い曲も現れるけれど。基調はねっとり緩やかなノリ。覇気がなく淡々とドラッギーな酩酊感を振りかけた。

 全編にわたる異様な和音感が違和感に拍車をかける。メロディは場面ごとで聴くとポップな要素もあるのに、曲全体ではべったり床に座り込み停滞したムードを漂わせる。
 ハマると中毒性が猛烈にある。耳になじむまで時間がかかる音楽だ。

 本盤は初心者へ向かない。モーマスは生きざまを含めて聴いたほうが楽しめる。
 きちんと初期盤から順を追って聴き、振り返っていかに高い落差と遠い旅路を経てきたかを痛感しながら、その時点の作品を聴いたほうが独特な彼の世界観と変貌を堪能できる。

Track list
1 Sempreverde 3:53
2 Life Of The Fields 5:49
3 Corkscrew King 5:26
4 Klaxon 3:52
5 Robin Hood 4:17
6 Lady Fancy Knickers 4:58
7 Lute Score 2:55
8 Belvedere 3:48
9 Your Fat Friend 4:03
10 Mr Ulysses 5:16
11 Water Song 4:49
12 Jesus In Furs 4:32
13 Bantam Boys 4:01
14 Cockle Pickers 7:57
15 The Artist Overwhelmed 4:28

Recorded in Berlin.
Morphs between songs by John Talaga.
Background artifacts on "Bantam Boys" by Bernhard Gal.
Additional texture on "The Water Song" by Roddy Schrock.

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