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井上陽水 「陽水II センチメンタル」(1972)

 鮮烈なサイケ・フォークの傑作。

 井上陽水の2枚目は、メンバーを一新。アレンジは星勝がほとんどの曲を担当しつつも、A6を深町純、B2,4,6が陽水自身と少しづつ陽水も音作りに口を出してきた。なお作編曲は前作同様に、全て陽水の担当。

 普段ぼくは洋楽聴くときの癖で、歌詞を聴かずに音楽聴いてることが多いけれど。このアルバムはなんだかちょこちょこ歌詞が耳に入ってくる。そしてその言葉選びや曲世界の、妙に突き放した空虚さが不思議な魅力だと思った。
 ありふれた言葉が、変なタイミングで入ってくる感じ。日常がぐにゃりと歪むかのよう。

 演奏も前作と一新。スタジオ・ミュージシャンを並べた。そのためか、そもそものアレンジのせいか。「センチメンタル」ってタイトルとは裏腹に、本作では前作のウェットさがきれいに拭われた。
 たしかに情緒を強調した曲もあるけれど、どれもからっと乾いている。ハイトーンで伸びやかな陽水の歌声が、非日常性を運んできた。

 前作での洗練さが強調され、おしゃれながらも日本的な野暮ったさをごく片隅に引っ掛けている。それがアメリカナイズされたはっぴぃ一派とは全く違う。
 他国の文化に憧れず、吸収して日本風味の世界観を描いたのは星のセンスだろうか。

 しかしアコギを前面に出したフォーク風味すらも、突き放したサイケ感覚があり。
 共感や親しみもって観客へ媚びず、陽水の美学が透徹に表現されている。

 冒頭の冷たい弦からアコギの爪弾きの落差で幕を開けた冒頭から、しみじみしてるはずなのにどこか冷めた最終曲まで隙が無い。曲によってマイナーな響きに個人的な好き嫌いはあるけれど。
 アルバムの完成度としてはばっちり。この盤は聴いててどきどきした。


Track list
A1 つめたい部屋の世界地図
A2 あどけない君のしぐさ
A3 東へ西へ
A4 かんかん照り
A5 白いカーネーション
A6 夜のバス
B1 神無月にかこまれて
B2 夏まつり
B3 紙飛行機
B4 たいくつ
B5 能古島の片思い
B6 帰郷 (危篤電報を受け取って)

Personnel:
Lyrics By, Songwriter, Vocals – 井上陽水
Acoustic Guitar – 安田裕美 (tracks: A2, B4, B6), 星勝, 井上陽水
Arranged By – 深町純 (tracks: A6), 星勝 (tracks: A1, A3 to A5, B1, B3, B5), 井上陽水 (tracks: A2, B2, B4, B6)
Arranged By [Strings] – 小野崎孝輔 (tracks: A1)
Backing Vocals – シンガーズ・スリー, 川瀬泰雄, 井上陽水
Bass – 竹部秀明 (tracks: A6, B1, B3, B5), 稲葉国光 (tracks: B4, B6), 高中正義 (tracks: A1, A3 to A5)
Drums – 田中清司
Electric Guitar – 星勝, 矢島賢 (tracks: A6)
Piano – 深町純, 飯吉馨 (tracks: A5), 本田竹彦 (tracks: A3)
Synthesizer [Moog], Organ – 深町純

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