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井上陽水 「断絶」(1972)

 バンド編成で単なるフォークではない世界を描いた1st。

 Amazon Music Unlimitedで配信を機会に、聴いてみた。ぼくが洋楽を聴き始めたのは83年頃。
 陽水は拓郎や泉谷と同じ箱って認識であり日本のフォーク、すなわち目先では"前世代の古臭いもの"って仮想敵みたいなものだった。ニューミュージックのように洗練されていないのだろう、と。

 もちろんヒット曲の何曲かは知ってるが、あまり聴いたことはない。特に独特のなまめかしい節回しに癖を感じた。
 ぼくの若いころははっきり言って苦手。この歳になると耳が鷹揚になったのか、味として捉えられるようになったけれど。
 
 さて、本盤。詳しいプロフィールやエピソードは詳しくないので触れない。Wikiを丸写ししても詮無いし。
 今回聴いて感じたのは、はっぴぃえんどとは別方向でのロック路線を追求したんだなってこと。具体的にはグループ・サウンズ路線。

 楽曲としてアコギ一本の弾き語りで成立すると思う。しかし陽水もしくはスタッフがそれを良しとせず、バンド編成で本盤を作り上げた。
 すなわち陽水はフォーク歌手って思いこみをぼくは持ってたが、デビュー当時からそんな時代は無かったんだ、と実感した。

 プロデュースはポリドールのディレクターとして多賀英典が務めた。音楽的なプロデュースはアレンジしたモップスの星勝だろう。個人的には世代的に、初期"うる星やつら"の音楽担当って印象が強い。星はこのあと長きにわたり、陽水のサウンドを支え続けることになる。
 
 サウンドははっきり言って泥臭い。洋楽の洗練さよりも歌謡曲の情緒をそのまま持ちこんだ。正直なところぼくの好みではない。Amazon Music Unlimitedで気軽に聴けるからこそだなあ。

 確かに喉の使い方などに兆しはあるけれど、後年ほど陽水の歌い方に癖は無い。伸びやかに歌い、あまり声は作っておらず。
 旋律のウェットさにげんなりする場面はある一方で、陽水が喉を張る瞬間で確かに説得力あり。

 星のアレンジは決して野暮ったくはない。まさに(6)が象徴。アコギのかき鳴らしで弾き語り調子な曲へストリングスをかぶせた。バンドと噛み合う質感は、流しか演歌か歌謡曲かってノリなのだが。
 ビブラートさせずまっすぐ白玉で透徹な弦の響きが、妙にこの曲へクールな魅力を付与している。

 なおバンドのメンバーは、リズム隊がモップス繋がりで三幸太郎(b)と鈴木ミキハル(ds)。エレキギターは星自身が弾いた。
 当時のグループ・サウンズのシーンは無知だが、彼らの全盛期だったのかな。拓郎の曲"たどりついたらいつも雨ふり"をリリースするのは本盤と同じ年だ。
 
 他のメンバーはスタジオ・ミュージシャン。アコギは星や陽水のほか、来生たかおの名前もある。この当時はスタジオ仕事をしていたのかな。鍵盤には深町純の名もあり。

 ロック路線と冒頭に書いたが、洋楽志向のロックではない。編成としてロック・コンボなだけ。ヘッド・アレンジのバンド・サウンドとは異なる、星のしきりによる「歌謡曲とは違う何か」が出来上がった。
 その象徴が数曲で聴ける、ボーカルにまでかぶせたジェット・マシーンで豪快にしゅわしゅわ言わせた音効果。振り返ってイメージする、昔のサイケ処理だ。どっぷりかけたエコーも似たようなもの。

 ドラマティックなアレンジが凄い名曲"傘が無い"を収録の一方で、時代の空気感に密接した湿りけが乾ききらないアルバム。
 "傘が無い"のニヒルなロマンティックさを追求した楽曲と演奏を揃えたら、時代を超えた凄みを持っていたと思う。


Track list
A1 あこがれ 3:56
A2 断絶 3:52
A3 もしも明日が晴れなら 2:31
A4 感謝知らずの女 3:05
A5 小さな手 3:22
A6 人生が二度あれば 4:54
B1 愛は君 2:39
B2 ハトが泣いている 2:26
B3 白い船 3:27
B4 限りない要望 4:19
B5 家へお帰り 2:38
B6 傘がない 5:30

Personnel:
Vocals - 井上陽水
Arranged By - 星勝
Acoustic Guitar - 星勝, 原茂, 来生孝夫, 井上陽水
Drums - 鈴木ミキハル
Electric Bass - 三幸太郎
Electric Guitar - 星勝
Electric Piano - ジャニー・山崎
Organ [Hammond], Piano - 深町純
Producer [Director] - 多賀英典

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