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挾間美帆/Metropole Orkest Big Band 「The Monk: Live At Bimhuis」(2018)

 ブラスの複雑な響きとピアノのシンプルさで対比させ、モンクの世界を豪華に描く。

 現在のラージ・アンサンブル分野でシーン代表者の一人に数えられる挾間美帆による3年ぶり3rdアルバム。オランダのビッグバンド、メトロポール・オーケストラと共演のライブ盤だ。
 2017年はモンクの生誕100年であり、トリビュートの一環でこの編成によるツアーがオランダ4カ所で行われた。そこから17年10月13日、アムステルダムはビムハウスでのライブを収録した。ライブの完全収録ではなく、7曲を選んで。

 本盤に至る経緯や挟間の思惑はこのインタビューに詳しい。
https://note.mu/elis_ragina/n/n9664a6543d86
 企画は挟間からメトロポールに持ち込まれて、アレンジに工夫と苦労があったことなどを細かくじっくり述べている。

 オーケストラ一辺倒のアレンジではない。ピアノ・トリオを前提にしつつもオーケストレーションされたホーン隊が飾るパターンと二種類が収められた。
 ライブでは他に、ビル・ホールマンとオリバー・ネルソンの編曲を二曲づつ演奏したそう。
 つまり本盤は挟間のオーケストレーションに着目した構成になっている。

 現在のビッグバンドはスイング時代とアレンジが大きく違う。ものすごく単純に言うとアレンジが複雑になっている。厚みを出すための大編成ではなく、ハーモニーややり取りの妙味を味わうのが肝だ。
 その点で、この盤はモンクの陰った色合いを保ちながらも、見事にふっくらゴージャスに仕立てた。

 挟間はアレンジと指揮を担当。
 なおオーケストラと言っても弦はいない。管だけのジャズ・ビッグバンドだ。そこでの指揮者とは何の役目だろう。テンポや展開をキューの役割かな。アドリブ的な要素を合図してるようには聴こえなかった。 

 B♭のチューニングがイントロの(1)で幕開けして、ピアノ・トリオ編成から管にアレンジが回って、そのまま豪華な花が開く(2)へ。
 小粋なギターのカッティングから、ずんずん音数が増えていく芳醇な(3)は、ボサノヴァ風味。ピアノのミニマルな響きをブレイクにしつつ、ビッグバンドがきれいに機能した。
 (4)はむしろいわゆるビッグバンド風。しかし硬質なリズム感や雰囲気を作って、生真面目な空気が主流だ。

 ロマンティックで透徹な(5)はテーマのメロディをクラリネットからピアノ、トランペットに導かれて、孤独な色合いを保ちつつも優美さを強調した。
 ピアノ・ソロを生かしたアレンジは、オーケストレーションに淡白もしくは手なりで終わらせずに、ひねりを与えてる。ブラスがメロディの譜割をぐしゃっとせわしなく吹くところとか。
 ピアノが無伴奏ソロを取る場面はあるが、ソロ回しよりもアンサンブルの妙味で一曲を構成した。

 吹奏楽風のパンチ力ある(6)はテーマとバックリフをホーン隊がそれぞれ担い、爽やかで勢いある流れを作ってる。
 (7)もホーン隊が音をより合わせて複雑な奥行きを作った。ピアノがソロを取り、シンプルと多様の落差で楽曲を強調。

 挟間のアレンジは小難しさや実験的な方向性へ耽溺しない。アカデミックな知識に支えられた緻密さを保ちつつも、理知に縛られず明るいスイング感を生かした。それでいて、りりしい響きもきっちり保っている。
 ウィズ・オーケストラでもない、オーケストレーションだけでもない、双方を溶け合わせた現代のラージ・アンサンブル目線できれいにモンクを料理してる。


Track list
1 Thelonious 6:42
2 Ruby, My Dear 8:36
3 Friday The 13th 6:58
4 Hackensack 6:50
5 'Round Midnight 7:53
6 Epistrophy 7:52
7 Crepuscule With Nellie 5:14

Producer,Conductor,Arranged By - 挾間美帆
Producer [Artistic Producer MO] - Gert-Jan Blom
Bass - Aram Kersbergen
Bass Trombone - Martin van den Berg
Drums - Marcel Serierse
Guitar - Peter Tiehuis
Piano - Hans Vroomans
Saxophone, Clarinet - Leo Janssen, Marc Scholten, Max Boeree, Paul van der Feen, Sjoerd Dijkhuizen
Trombone - Jan Bastiani, Jan Oosting, Louk Boudesteijn
Trumpet - Martijn de Laat, Nico Schepers, Ray Bruinsma
Trumpet, Flugelhorn - Rik Mol

Recorded Live at Bimhuis, Amsterdam, the Netherlands, on October 13, 2017.

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