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TZ 8324:John Zorn "Transmigration Of The Magus"(2014)

 ジョン・ゾーンのオカルト趣味を投影した、疑似バンドの佳作。

 ナグ・ハマディ写本に書かれたグノーシス主義(1~4世紀に地中海で普及)を下敷きに、逝去一周年を迎えたルー・リードを偲んだ。
 帯にはルーとジョン・ゾーンの2ショット、ジャケ中にはアップのルーによる自録りをデザイン。ジャケットは13世紀のRaymond Lullによる錬金術の木。他にも17~18世紀の絵図を使用した。

 いちおうテーマ性に最も近いGnostic Trioの5thと取れるが、バンドありきよりも本盤のコンセプトを元に最も近しい疑似バンドとして本編成を決めたのではないか。
 実際、トリオの3人に加えオルガン、ハープ、ビブラフォンと編成を増やしている。
 つまりハープが二人、ビブラフォンが二人にギターとオルガンという、かなり特異な編成を持つ。

 楽曲は細かくアレンジされながらも、即興要素のダイナミズムは失っていない。まさにゾーンの疑似バンドが持つ躍動性と構築美を両立させた。
 作曲とアレンジ、指揮もゾーンが行っている。一発録音か、ダビングありかは微妙。よくわからない。
 ギターが2本聴こえる場面もあるが、ギター・ループとも取れるし。

 流麗で繊細な楽曲で幕を開けるが、きれいきれい一辺倒の単純な構成ではない。時に実験要素を増したり、ビル・フリゼールを前面に出したアメリカーナな展開など、多様性を持つ。
 ビブラフォンとハープがダブルな点を生かし、アレンジや音像の幅と奥行きが広がった。ふくらみをジョン・メデスキのオルガンが担い、スペイシーさが加速する。

 明確なリズム楽器こそいないが、弦やビブラフォンの持つ歯切れ良いビート感が疾走性を表現した。
 譜面と即興のバランスも、相変わらずばっちり。長尺の冗長性もなく、譜面へ縛られ過ぎてもいない。テーマから滑らかにアドリブへ流れていく。ゾーンも目まぐるしいカットアップを指示せず、丁寧に楽曲を紡いでいる。
 
 精妙に撚られたきめ細かい音の布が気持ちいい。詩的で優美ながら、スリルと躍動感も同居した。
 ゾーンの疑似バンド作品は金太郎飴な安定したクオリティだが、中でも本作は素敵で多様さに聴きこみがいのある仕上がり。

Track list
1 Into The Light 8:05
2 Transmigration Of The Magus 6:43
3 Perfect Mind 4:00
4 Providence 4:27
5 Gnostic Hymn 4:45
6 Apocryphon 3:44
7 The Divine Word 3:37
8 The Three-Fold Thought 4:29
9 Merlin 4:30

Track list
Composed By, Arranged By, Conductor - John Zorn

Guitar - Bill Frisell
Harp - Bridget Kibbey, Carol Emanuel
Organ - John Medeski
Vibraphone, Bells - Al Lipowski, Kenny Wollesen

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