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細野晴臣 「Good Sport」(1995)

 大学生国際総合スポーツ祭用に、厳かさへわずかな陰りを足して描いた。

 細野晴臣の15thソロだそう。彼のキャリアで言うと、前作が"N.D.E"(1995/4),次作が"NAGA"(1995/10)。ちなみに本作が95年9月。YMOを再生の一方で、矢継ぎ早にアンビエントの盤を発表していた時期にあたる。
 
 アルバムのテーマは1995年の第18回夏季ユニバーシアードに使われた音楽のリミックス集。このときのオフィシャル・サイトがまだ生きており「大会概要」のページではテーマ・ソングまで聴ける。
http://universiade.fjct.fit.ac.jp/index_j.html
 なおテーマソング「ライフ - There is nothing higher than your life -」(作詞:サンディー,久保田麻琴、作曲:細野晴臣、編曲:JENNY CHIN,久保田麻琴)は本盤へ未収録。

 詳しい経緯は分からないが、どうやら大会音楽の全部を細野が担当したようだ。
 本盤の構成もストーリー性を持っており、冒頭のファンファーレから聖火ランナーが火を灯す、一応の流れを作った。閉会式なりに流れた音楽もあるのかな。
 観客のどのくらいが、細野の音楽を意識して聴いていたのやら。贅沢な話だ。せっかく細野へ発注してるというのに。

 通り一遍のBGMを作るなら、なにも細野へ発注する必要はない。細野も工夫したのではないか。開放感あふれる無邪気なテクノは望まれていまい。かといってダークなアンビエントは趣味性に走り過ぎ、スポーツの祭典にふさわしくない。

 本盤では絶妙なバランスを取りながらも、若干は暗めな音像に軸足が置かれた。厳かと取れなくも無いが、少なくとも音楽だけ聴くと沸き立つスポーツ精神の発露というよりも、もう少し内省的なムードをイメージする。

 Wikiによると屋内中心の開催なようだが、スピーカーも劣悪な環境が予想される。そもそも音楽が主でなかろう。
 小学校の運動会じゃあるまいし、競技中に音楽は流れないのかもしれないが。

 音楽は細野によるシンセと打ち込み。
 音数を少なく、個々の音色で目立たせた。ミニマルな要素が強い一方で、メロディ・センスはばっちり。モナド時代の硬質ながら旋律感を失わぬ、細野の味がしっかり出てる。

 さらにリズミックさもばっちり。ファンクネスをうっすら漂わせ、メロディでなくビートで躍動感を強調した。
 最初はさりげなく。聴いてると、次第に音世界の奥深さに耳が行く。

 冒頭こそ異世界っぽい非日常性を持った祭典の幕開けを思わせ、アルバムが進むにつれて多様な音楽の要素が現れた。
 シンプルなテクノの手法を使って、踊らせないけれど心は沸き立たす。素晴らしい構成力と、リズムの工夫に興味が尽きない。

 圧巻はやはり、11分にわたる(6)。シンプルな音列が次々と現れ、リズムの奔流にじっくり着実にかき回された。音楽は、着実かつ混沌さを内包して神秘的に展開していく。

 かなりレア盤だったが、今はAmazon Music Unlimitedで容易に聴くことができる。ありがたい。
 


Track list
1 good sport mix グッド・スポーツ・ミックス
2 fanfare ファンファーレ
3 sacred runner 聖火ランナー
4 fin de sie´cle 二十世紀の夜明け
5 nostalgia ノスタルジア
6 troy (the videoman) トロイ~ビデオマン
7 torch music トーチ・ミュージック
8 newage children 新しい子供達
9 bamboo wave 光る風~竹林の波
10 a collage of life コラージュ・オブ・ライフ

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