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Julian Lennon 「Valotte」(1984)

 七光りで水増しな様相もあるが、確かな遺伝の才能も感じられるデビュー盤。

 ジュリアン・レノンは21歳で1stアルバムな本作をリリースした。父親のジョン・レノンの面影がある、顔立ちと声質を持って。作曲もいがいとジョンの血筋があるようにも聴こえる。"Valotte"は特に。
 ぼくがリアルタイムの洋楽を聴いてた時期にデビューしたから、シングル曲の"Valotte"、"Too Late for Goodbyes"あたりはメロディが脳裏に染みついている。"Say You're Wrong"も聴きおぼえあったな。

 プロデューサーはフィル・ラモーン。それなりに音作りへ口を出したと思うが、まったくジュリアンがお人形扱いされてはいないようだ。
 とはいえ父親の残像を、全くスタッフから期待無しはありえない。意識か無意識にかかわらず、ジョンの遺作"Double Fantasy"(1980)に似た、しっとりと柔らかく大人っぽい雰囲気がアルバムに漂っている。

 収録の10曲はすべてジュリアンの自作。しかしもっともジョンの色が強い"Valotte"はCarlton MoralesにJustin Claytonとの共作になる。なんだかんだでジョンっぽく残る二人が寄せたんじゃないかな。
 なお二人ともジュリアンの音楽仲間らしい。この後も共作で数曲、二人はクレジットあり。Justin Claytonはギタリストとして本盤にも参加した。

 ジュリアンはギターでなく、鍵盤屋らしい。さらにドラムも演奏。敢えて、かジョンとは違う楽器を選んだ。
 アカデミックな教育を踏まえた流麗な指さばきをジュリアンは披露しない。テクニックでなく、あくまで歌の伴奏で鍵盤を弾いている。
 ドラムも同様で、本盤にはスタジオ・ミュージシャンが鍵盤やドラムを弾いている。
 楽器奏者の腕前でなく、あくまでもSSWとしてジュリアンは振舞っている。

 冒頭こそ鍵盤を生かしたアコースティックでメロウな"Valotte"で始まるけれど。
 (2)ではいきなりギター中心のアレンジ。デジタル・シンセが鳴りシモンズ・ドラムが響く、いかにも80年代っぽい(6)や(9)など方向性は多様だ。
 ちょっととりとめないところもある。しかしラモーンの手腕なのか、音像の質感は統一され、とり散らかって聴こえないのはさすが。

 どの曲も作りはシンプル。平歌からサビの流れが短くて、一つのメロディを繰り返しイントロをつけて曲に仕上げたって印象ある。(3)や(4)のようにまとまった楽曲ももちろんあるけれど。
 
 ジュリアンの歌声は甘い。激しいシャウトや声量あるテクニックではなく、ソフトな持ち味で穏やかに聴かせる。時にダブル・トラックで厚みを作りエコーで飛ばした。
 この辺も、正直おぼつかなさがあり。確かな才能はあれど、ジョンの息子で無ければデビューしてなかったかもしれない。

 とはいえ巨大な父親と比べられるプレッシャーを感じていたのは、なによりジュリアン自身だろう。その気負いを表に出さず、素朴な持ち味を滑らかに表現した胆力は評価する。
 
 ジョンを懐かしんで聴くのはお門違いだ。だが血は確かに受け継がれている。フォロワーではない、後継者でもない、しかしジョンの色を漂わせたポップスとして、虚心に本盤を聴こう。予想以上に、本盤を味わい深く楽しめるはずだ。



Track list
1 Valotte 4:17
2 O.K. For You 3:39
3 On The Phone 4:51
4 Space 4:24
5 Well I Don't Know 4:39
6 Too Late For Goodbyes 3:35
7 Lonely 3:55
8 Say You're Wrong 3:29
9 Jesse 3:51
10 Let Me Be 2:07

Personnel:
Julian Lennon - lead vocals, keyboards, Simmons drums
Justin Clayton, Carlton Morales - guitars
Barry Beckett, David Lebolt, Peter Wood - keyboards
Roger Hawkins, Steve Holley - drums
David Hood, Marcus Miller, Carmine Rojas - bass guitar
Ralph MacDonald, Steve Holley - percussion
Rory Dodd, Eric Troyer, Julian Lennon - background vocals
Jon Faddis, Joe Shepley - trumpets
Michael Brecker, George Young, Lawrence Feldman, Ron Cuber - saxophones

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