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Neutral Milk Hotel 「In The Aeroplane Over The Sea」(1998)

 弾き語りと多重録音の両極端を行き来する、内省的な盤。

 ニュートラル・ミルク・ホテルはもともとジェフ・マンガムの個人プロジェクトだったが、本2ndでメンバーを揃えてバンド編成に立ち上げ直した。けれど本盤の本質は、ジェフのSSW的な盤と変わらない。

 確かにホーン隊など豪華に盛り上がるアレンジもある。(6)のようにバンドっぽいノリもある。けれども弾き語りの曲とそれらは交錯した。アルバムを通して聴いたときに残るのは、バンドのダイナミズムではない。ジェフの個人的なメロディであり、サウンドだ。

 プロデュースは前作同様にアップルズ・イン・ステレオのロバート・シュナイダー。プロデュースに留まらず、鍵盤など演奏にも参加している。
 前作と大きく違うのは、きちんとしたスタジオ録音であり、妙なローファイさはかなり減じている点だ。まったくつるつるのポップスでなく、インディっぽいざらついた要素やわずかなノイジーさを付与してはいるけれど。

 ジェフの書く滑らかなメロディは本作も健在であり、磨きがかかった。
 ちょっと切なく、鼻に絡むようなひねりを入れた旋律が次々溢れてくる。(2)と(5)を除き、ジェフのオリジナル曲。
 基本はミドルテンポ。(8)で声を張り上げもするが、根本的にはそっと柔らかく歌っている。
 
 世界へ反発もせず、観客をアジテーションもせず。穏やかに自分の小宇宙を愛で、磨いている。
 繊細さと裏腹に、過剰な自己防衛は無い。弾き語り一発の虚飾無い風情で自らを表現もできるし、多様なアレンジを受け入れて飾ることもできる。
 とはいえオケがどんなに派手でも演奏と歌は一体化せず、オケの上に歌が乗るような独立した存在感を歌に感じるミックスながら。

 単純にソフト・ロックな方向性を求めるならば、ホーンが加わり豪華なアレンジのほうが聴きごたえある。でもジェフもしくはプロデュースしたロバートは、安易な世界観の統一を良しとせず、弾き語りを対極へ配置することでジェフの奥行きと幅を現した。

 本盤はエレファント6というコミュニティのメンバーが参加していながら、孤高の存在だ。他者とコミュニケーションをとりつつも、音世界はジェフの価値観がしっかり一本通っている。

Track list
1 The King Of Carrot Flowers Pt. One 2:00
2 The King Of Carrot Flowers Pts. Two & Three 3:06
3 In The Aeroplane Over The Sea 3:22
4 Two-Headed Boy 4:26
5 The Fool 1:53
6 Holland, 1945 3:12
7 Communist Daughter 1:57
8 Oh Comely 8:18
9 Ghost 4:08
10 Untitled 2:15
11 Two-Headed Boy Pt. Two 5:13

Personnel:
Jeff Mangum – guitar, voice, organ, floor tom, bowed fuzz bass, tapes, shortwave radio
Jeremy Barnes – drums, organ
Scott Spillane – trumpet, flugelhorn, trombone, euphonium
Julian Koster – Wandering Genie, the singing saw, bowed banjo, accordion, white noise

Additional musicians
Robert Schneider – home organ, air organ, fuzz bass, harmony vocal, one-note piano
Laura Carter – zanzithophone
Rick Benjamin – trombone
Marisa Bissinger – saxophone, flugelhorn
Michelle Anderson – uilleann pipes

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