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Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Astrorgasm from the Inner Space」(2014)

 再演の炸裂で露払い。あとは河端の濃密サイケをたっぷりと。

 各曲18分強。じっくりと濃厚なアシッド・マザーズの世界を楽しめる良盤。とはいえ(1)以外は河端が主導権をひときわ強く持った仕上がりだ。
 
 本盤では志村と一楽の2ドラムで録音された。みっちり音が充満しており、2ドラムっぽいドラムの分厚さはあるけれど、対比構造ではない。ひょっとしたら1ドラム編成で、曲ごとにドラマー分けとも思える。

 この当時のライブ・ツアーでは河端、田畑の2ギターに志村の1ドラム編成。本盤には一楽やコットン・カシノ、タブラ奏者にJiji No Hoppetaromanが参加しており、一楽もかれらのようにゲスト枠か。
 AMTのライブ記録上は、本盤録音時期の13年12月~14年に一楽らが参加したライブ記録は無い。だから(1)はライブ音源が素材でもないようだ。
 
 100枚もしくは50枚限定のアナログが数種類あり。Discogsではテスト・プレス盤も流出(公式にライブ会場で販売?)している。
 "Astro"って言葉をアシッド・マザーズ・テンプル&メルティング・パライソUFO(宗家)ではアルバムタイトルに何回も使っている(*)が、組曲的な意識があるのだろうか。ぱっと聴きでは各盤での関連を意識できていない。

 (1)のみ過去のレパートリーを再演で、津山とコットンの曲。あとは河端が作曲した。(2)と(3)はコットンも共作者にクレジットはあるが、多重録音のスキャットを入れたため作曲者に並べているのではないか。あとはふわふわと雄大な河端のサイケな世界が存分に広がった。

 (1)は冒頭こそアコースティックに始まるが、いざ盛り上がると怒涛のAMT節。ねっとり大きくうねるノリを作ったうえで、指数多くベースが煽る。その上をのびのびかつ混沌にエレキギターの咆哮が疾走した。
 なおAMTの常として、本盤も河端が様々な楽器をダビングして単なるセッション音源にはしていない。奥行きと広さを緻密に構成して、広々とした怒涛のサイケを作る。
 もちろんテンポが加速する醍醐味も、ばっちり味わえる。

 シンセと民族楽器、コットンのささやきで始まる(2)の酩酊感なども美しくスペイシーだ。
 この曲はコットンの多重スキャット以外は河端の独壇場。中盤まではリズム楽器が無く、各種の弦楽器が複雑に入り乱れ、弦をはじく音がパーカッションの代わりをした。
 サンプリングのパッド音源っぽく、コットンの和音で伸びるハーモニーが清らかで美しい。
 途中のシンセだけが東かな。これも河端の演奏かもしれない。
 最後にせわしないスネアの乱打が挿入され、広がるコットンの歌声と対比した。混沌として、隅々まで鮮やかな魅力にあふれた良い曲。

 (3)はリフが奇数拍子でループする。シンセやドラムが合間をつなぎながら、淡々と引っかかるリズムでフレーズが繰り返された。全く同じフレーズが続くわけでなく、たまにパターンは変化する。
 敢えてジャストでなく手弾きの揺らぎを生かすことで、不安定なムードを漂わせた。
 ドラムはループよりもそのまま上物に合わせ叩いてる。いや、フレーズサンプリングか?時々似たような譜割でパターンが現れては消えた。
 
 河端は先に曲を作り、あとからタイトルを考えるのが常と言う。このミニマルさにタンジェリン・ドリームを連想して、"Kiss in The Tangerine Dream House"って表題になったのかも。なおこの曲名には他にも、バンドか曲名のパロディが織り込まれていそう。
 いちおうバンド形式の曲だが、ベースがさほど目立たず河端のソロっぽい味わい。

 中盤以降、ギターソロが始まるとAMT流の剛腕な進行性が鮮明になった。まずはブライトな音色で数本の弦楽器を足し合わせ、ソロよりもすべて譜面めいた整然さを持つ。
 でも物足りないなど言わせない。終盤は激しく歪んだ音色のツイン・ギター編成で、がぶがぶと即興をばらまいた。
 ベースが控えめなミックスながら、ドラムが盛大に暴れてテンポアップ、ギターが両チャンネルで吼えた。

 最後でタイトル曲の(4)は初手から不穏な宇宙空間のサイケ。フィードバックの風からハーモニウムの中東風味なソロへ。
 やがて性急なエイトビートのドラムが現れ、シンセも浮かび上がりAMTの黄金進行に突入した。
 タブラはこの曲で明確に登場した。ディストーションの利いたギターソロの背後で、リズムに彩りを添える。
 エイトビートは持続しつつも、タブラのテンポ感やハーモニウムののんびりした嘶き、ギターの浮遊する譜割で小節感はかなり曖昧、極深サイケの海へどっぷり浸れた。

 このように4曲とも異なる方向性で、バラエティに富んだ河端の才能が堪能できる。

(*)"Astro"盤
2008 Glorify Astrological Martyrdom
2014 Astrorgasm From The Inner Space【本盤】
2016 Wake To A New Dawn of Another Astro Era
2017 Astro Infinity Discotheque



Track list
1 Dark Star Blues 18:47
2 Pleasure Mantra Of Sorrows 16:13
3 Kiss In The Tangerine Dream House 19:38
4 Astrorgasm From The Inner Space 19:00

Personnel:
Cotton Casino : voice, bubble guitar
津山篤 : bass, acoustic guitar
一楽儀光 : drums
志村浩二 : drums
東洋之 : synthesizer
田畑誠 : guitar-synthesizer
河端一 : electric guitar, bouzouki, acoustic guitar, sarangi, tambura, harmonium, electronics, tape machine, yangqin, drums
Jiji No Hoppetaroman : tabla

recorded at Acid Mothers Temple, Dec. 2013 - Jan. 2014
produced, engineered and mixed by 河端一
digital mastered by 吉田達也

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