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The Sea And Cake 「The Fawn」(1997)

 透き通った静かな熱狂に覆われた。ミニマル要素を取り込み乾いたポップ・ロック。

 前作"The Biz"(1995)から2年ぶり。矢継ぎ早にアルバム3枚をリリースしたシー&ケイクの4thアルバムがこれ。ゲストを招いたりと新機軸は無い。これまでの要素を踏まえつつ、よりアンサンブルのコンセプトを昇華させた。

 CD時代ながら全10曲、40分程度とLPレベルのコンパクトな作りだけど、さりげなく濃密な作り。あっという間に、しかし密やかに音楽が進んでいく。
 ポップなメロディを甲高い音域も使って、柔らかく紡いでいく。4リズムのバンド・アレンジは、リズムも上物も過剰に自己主張しない。
 主従の関係も作らず、リズムと上物が柔らかく結合して硬質な響きを作った。

 全音域がフラットに聴こえる。低音も高音も。特定の楽器をむやみに、もしくは派手に突出させない。刺激やコケ脅かしは一切なし。アンサンブルの総力戦を、自然体で提示した。
 打ち込みなのか、サンプリングなのか。ミニマルに演奏が繰り返され、特にドラムは複数トラックを使って厚みを出してるようだ。
 
 汗をかかないロックだ。リズムを刻み、歌にも演奏にも熱狂や力押しが無い。事なかれ主義に手抜きや脱力は皆無だ。そっと着実に演奏は組み立てられ、緻密にアレンジを練って追い込んでいる。例えが難しいが、達人の合気道を見ているかのよう。
 無駄のない動きで安定しつつ、スリリングなアレンジのアイディアがそこかしこに挿入された。

 第一印象は、ボサノバ風味で柔らかくねるビートに率いられた聴きやすいポップス。
 最初は癖のない音楽と思わせる。しかしじっくり聴くほどに、アレンジも演奏も音色もミックスも、繊細に作られた美しさがあるとわかる。
 あからさまな毒は無い。けれど無味無臭やおざなりさは皆無だ。
 雑味を丁寧に抜いて、噛むほどに味わい深い心地よさがある傑作。

Track list
1 Sporting Life 4:54
2 The Argument 5:02
3 The Fawn 3:07
4 The Ravine 3:18
5 Rossignol 3:30
6 There You Are 4:48
7 Civilise 3:21
8 Bird And Flag 3:51
9 Black Tree In The Bee Yard 3:04
10 Do Now Fairly Well 5:51

Personnel:
Performer – Archer Prewitt, Eric Claridge, John McEntire, Sam Prekop
Recorded By, Mixed By John McEntire
Written-By The Sea And Cake
Recorded and mixed at Soma Electronic Music Studio, October 1996

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